「フルサト」by ハイフェッツ


第38章 花を咲かそうよ


(2007年6月16日)

 私たちの住むこの社会は、残念ながら様々な悪意に満ち満ちています。医師から聞きましたが、政府は財政削減のため、認知症の患者のベッドを30万床減らすそうです。財政が大変なことはわかりますが困ります。減らすどころか増やすべきです。

 安倍総理の、まるで他人事であるかのような話し方には腹が立つ。政治エリートで家族親戚みなが官民の要職に就いています。そのことにケチをつけるつもりはありませんが、親族で権力者。一族全員が裕福だという人に、庶民の苦しみがわかるのか。

 認知症の老人や再起不能の寝たきりの家族を抱えた庶民の苦しみがどんなものか。それがわかった上で、ベッドを三十万床減らすのか。

 そんな国が「美しい国」なのか。
  私は問いたい。

 すべては流れていくのです。流れ着いた果てで花が咲けばいい。人間に許されているのは、泣くことであり笑うことでしかありません。あらゆることが私の心の中の花になってほしい。私はそれだけを考え続けます。

 小田原に向かう新幹線の中で、私の胸に、虚無的で明るい歌が響きます。この歌の明るさは沖縄の持つ明るさであり、この歌の悲しさは生きとし生けるもののすべてが背負っている宿命なのではないか。

 夏川さんの歌唱時の表情は、すべてを承知している菩薩様のよう。歌を聴いて、泣いて笑ってすべてを忘れたい。

 そして歌詞の通り、いついつまでも、いついつまでも、花を掴んでいたい。

 

(「花」完結)

フルサト エッセイ 2007


夏川りみさんと遊ぼう