「フルサト」by ハイフェッツ
第32章 神童と童神
(2007年5月19日)
2006年はクラシック音楽を愛するものにとって特別の年でした。そう、モーツァルト生誕250年という記念すべき年だったのです。世界中で星の数ほどのイベントが開かれました。
ご存知の通り、W.A.モーツァルトは、音楽史上まれにみる天才として知られています。「神童」は大人になっても「ただの人」にならず、音楽界に革命を起こしました。250年たった今でも、彼の音楽は常に新しさを提供し、私たちの心に響きます。
彼の神童ぶりの影に父親の存在があったことは良く知られています。当時の著名なバイオリン奏者であった父レオポルトは幼少期の彼を見て才能を感じとり、徹底的な教育を行いました。そして「神童」を育てました。モーツァルトの才能は神から譲り受けたとしか思われませんが、父親のレオポルトの存在なくしては成立しなかったものでもあります。
モーツァルトの曲に、有名な「きらきら星変奏曲」というのがあります。ピアノ独奏用に描かれた秀作です。この曲を妻があるとき素晴らしく演奏しました。会場のお客様にも随分拍手していただき、また後ほどにはお褒めの言葉をいただいたエキサイティングな演奏でした。それでいて伝統美を失わず、エンタメ性も充実したもの。
私はマネージャーとして舞台袖で聴いていました。感動しました。感動の種類はさまざまですが、妻の演奏へのそれは、いつも夏川りみを聞いて感動するものと重なるのです。
そんな妻が2005年8月7日、娘を出産しました。「童神」を生んだわけです。娘を「神童」に育てることは私にはできませんが、「童神」を娘の中に見つけて大切に慈しんで育てていこうと決心しました。妻と力を合わせて。多くの人に助けてもらいながら。