「フルサト」by ハイフェッツ


第37章 いつの日か


(2007年6月14日)

 新幹線で小田原へ向かう中、「花」について考えていました。

 作者の喜納昌吉氏は、この曲で世界的なヒットを飛ばし沖縄では教祖的な存在にまでなったシンガーソングライターです。一〇年以上前でしたか、私は紅白で初めてこの曲を聴きました。何となく観ていて、「えっ!」と思う歌にめぐり合いました。心打たれる歌声は石嶺聡子さんでした。

 「花」は多くの人にカバーされ愛されてきました。有名な人では石川さゆりさんや加藤登紀子さん、最近知りましたがマツケンこと松平健さんもリリースされてました。

 作者の喜納昌吉氏は個性が強すぎる感じを受けるのですが、私はやはり沖縄出身の夏川りみさんのが好きです。きれいに歌いますが原曲の持っている粘りつくような土着の匂いを残しています。

 沖縄のメロディが濃厚と感じますが、このメロディは東南アジアに共通のものらしいですね。歌詞も土俗的でペシミスチックな明るさがあり、泣きなさい笑いなさいというリフレインが妙に心に迫ってくる歌だと思います。

 川も人も、涙も愛も、どこへという宛てもなく流れていく。この世に存在するものはみな、流れていくしかないのだから、悲しければ泣こう、楽しければ笑おう。そんな刻々とした移り変わりの中に花が咲き、それは人が心の中で咲かせる花なのです。

 姉の発病と入院のときは、私は泣くことも笑うことも出来ませんでした。時を経て今は姉とは切り離された新しい生活の中で、泣いたり笑ったり。この歌を聴いて、無意識に自身を弁護したり。

フルサト エッセイ 2007


夏川りみさんと遊ぼう