ペダルと連動した異音
ブロンプトンのペダルは非常に良く考えられているとは思うが、耐久性に関してはあまり信用できないし、異音も発生しやすい。それでも便利なものは便利なので、異音が発生しないように使えれば、それが一番良いのではないだろうか。
まず左ペダルは使用しているうちに、構造上ガタが出やすい場所がある。
まず長く使用していると2の心金が緩んでくる。ペダルはアルミ製なので穴もだんだん大きくなる。ペダルも少しずつ改良されて丈夫になってはいるようだが、しょせんアルミなので必ず減ってゆく。1の部分には常に少量のグリースを塗っておくと摩耗が遅くなる。
反対側は引っ掛けているだけなので問題は少なそうだが、やはりアルミの穴が大きくなりガタが出やすくなる。
そして体重をかけていくと、ペダルをロックするための黒色の板の先がだんだん摩耗してくる。
以上の3点がそれぞれ少しずつ摩耗してくるので、全体では結構なガタがでる。ガタが出るとペダルを回すたびにクッとかカチとかいうような音が鳴り始める。回転の角度によってガタの場所の金属が移動する音なのだが、何の音か中々分からないし、自転車屋さんでもない限り、経験した人は殆どいないと思うので、原因を特定するのは結構難しいと思う。
対処方法はシリコンやテフロン入りの油をガタの出た場所に注油してやると、とりあえず音は止まる筈。ただ、根本的にはガタを取った方が良いのだが、私的には新品を買った方がベストと思う。というのは他のガタは取れたとしても、中の黒い板の先の摩耗を改善する方法は結局見つからなかった。
実は私はもっとペダルをひどい状態までこじらせてしまった経験がある。上の写真は、すでに新品のペダルに交換した後だが、ガタがひどく出てくるとペダルとクランクが干渉し始める。そしてもう一段ひどくなると、ペダルとクランクが引っかかるたびに、中の黒いストッパーの板が持ち上がり靴の下を押すようになる。ここまで来ると、もうどうしようもない状態なのだが、ここまで私は人柱となって、放置して使い続けてみた。
こんな状態でもペダルを変えるのが嫌な場合は、ペダルの接触部分をヤスリで削るか、ペダルの取り付け部分にワッシャーを足して、ペダルをクランクと離せば接触は無くなる。そしてグリースを塗りたくれば音もしなくなる。ペダルが下に傾くのは仕方ないが、慣れさえすれば乗っていても意外と気にならない。
今は3㎜ほど離れているが、これがクランクの擦り傷。この様な大きなこすれでも、場所を特定するのには時間がかかった。
右ペダルの方は構造が簡単なので問題が起きないと思いきや、色々と問題が起きる。
まず、周囲に付いている4つのプラスネジは非常に緩みやすい。緩んでくるとペダルを回す時にクキクキというような小さな音がするが、多分殆ど気付かないと思う。右足をペダルに乗せ変えた時に裏返っているとカクっとなるので気付くかもしれない。いくらきつく締めても相手が樹脂なので限界があるし、樹脂相手ではネジゆるみ止め接着剤も利かない。
右ペダルは作りが華奢で、解体して修理するようなものでも無いので、最初からセメダインのEP001Nのような樹脂も金属もOKの接着剤で接着してしまえばいいと思う。
意外な事だがブロンプトンは走りが静かなためズボンの裾とクランクなどとの擦れる音が気になる事がある。本人はまさかズボンとは思ってもみないので、中々気付かない。裾が広いズボンは気を付ける必要がある。また、衣服とサドルの擦れる音も気になる事がある。これも足の動きと同時に聞こえるので、チェーンやBBを疑ったりするが、注油さえしていればチェーンから異音がする可能性は限りなく低い。
ペダルの回転と関係ないと思われる異音
異音がペダルの回転と関係あるかないかを確かめるには、漕いだ後ペダルを止めて惰性で走ってみる。通常は異音がしたりしなかったり、不規則で法則も場所も分からない。そこで惰性で走っている最中に、サドルに腰を上下して重みをかけてみると何かが分かるかも知れない。私の場合はサドルを上下に揺らしてみるとギシギシという音がした。実はこれが異音の特定に非常に時間がかかった。またパチパチという小さな金属音が不定期に鳴るのにも閉口していた。
そして特定した場所が、後ろ三角を固定するフックだった。この場所にグリースを塗るだけで気になっていた異音はすべて消え去ってしまった。シートポストを固定する場所の隣なので注油のしすぎには注意が必要。
注油で解決したとはいっても何故ここからあのようなギシギシとかピンピンといった異音が発せられるのかを考えてみた。
この場所にはシートポストをきっちり固定するために、フレーム側に樹脂製のスリーブが張ってある。これがだんだん摩耗してきて少しずつフレーム側を強く締め付ける必要が出てくる。
この場合はスリーブがまだ新しいせいか、フックがセンターより少し左に寄っている。スリーブが摩耗するにつれて構造上フックは右に寄っていく。
こちらは後ろ三角が左に寄っていて、フックはセンターから右に外れている。スリーブが若干摩耗していてスリーブを新しく変えればもう少しセンターに近づくと思う。それでも、フックは後ろ三角側の中心にピッタリ当たる方が上手く行くのは間違いない。
というのは、後ろ三角側の先端の金属製カップが固定用のフックの下の部分を押して、走行中はフックが浮いた状態になる。
カップの先端下側が矢印の部分を押してフックを押し下げて浮かした状態で走行する。持ち上げる際にはフックがはね上がり固定したまま持ち上げられる。センターがずれているという事は、フックのこの部分を、サスペンションブロック側の先端カップが斜めの状態で常に押しているという事になる。
取り外してみるとフックの金具は板に穴が開いているだけなので、力が加われば簡単に左右に揺れやすい事が分かる。
走行中に黄色の矢印の部分をサスペンション先端の金属カップが押して、フックを押し下げている。青丸の様にセンターが合っていれば問題無いが、赤丸の様にセンターがずれていると、カップの先端が斜めに押してしまう事になる。センターがずれていると、ただの板に穴が開いただけのフックが揺れと共に左右に揺れてしまう事が想像できる。
またピンピンという小さな金属音は巻きバネが一緒におかしな動きで動く事で起こったようだ。
もちろん錆び始めていたのが一番の原因で、注油する事で音は無くなったので、新しい車体では起こり得ない症状だとは思う。
この症状はべダルの回転とは関係ないとは言いながら、実は坂道などで左右に力がかかったりすると連動してギシギシパチパチと始まるので、ペダルに原因があるのではと疑ってしまう。これが原因究明を遅らせた理由だったのは間違いない。
パチパチ、ピンといった原因不明の音が出始めたら後ろ三角ロック用のフックがカップに命中しているかどうかを確かめてみる。もしフックが右に外れている場合には、テストとして1㎜の針金を用意してUの字に曲げる。
シートポストを締め付けるハンドルとフレームの間に針金を挟み端を曲げて外れない様にしておく。この状態でロック用の爪は左に移動して、カップの中心に当たるようになる筈なので試乗してみる。
これで音が止まればめでたしめでたし。
フックを左に移動させれば異音が無くなることが分かったので、フックの隣にある段付きのスペーサーを必要分だけ削ればフックを左に移動させることが出来る。このスペーサーはアルミ製で簡単にヤスリで削ることが出来る。
逆にフックを右に移動させたい場合は、この段付きスペーサーの太い方にワッシャーをかませてやれば、フックを右に移動させることが出来る。
外形が大きめのワッシャーの場合は入らない場合があるので、なるべく外形が小さめのワッシャーを選ぶか、入るように外周を加工するかする。
段付きスペーサーの細い側には後ろ三角側のカップが当たるため、ワッシャーの取り付けは出来ない。
後ろ三角がメインフレームに命中していない場合は、後ろ三角そのものを曲げたくなるが、熱処理されたハイテンを曲げるのは、かなり危険な行為に思える。大きく外れていないのならば、フックを移動させてカップと命中させる方が無難な方法と思う。
共振しやすい場所
走っている時に地面の状態に周波数が合うと、ブロンプトンのプラスチックのローラーがカタカタカタと激しく鳴り始める。構造上どうしても遊びが出てしまうので仕方ないのだが、隙間にグリースを塗るとしばらくは音がしなくなる。解決方法はそれ位しか無いけれど、ベアリングを使ったイージーホイールやローラーブレードのウィールを使えば簡単に音がしなくなる。
タイヤの泥除けのマッドガードも薄く出来ているので、走行中に振動を起こしやすい。前輪では起こりにくいが、後輪は結構パタパタと振動する事がある。振動して音が発生しやすいのは赤で囲んだ2か所。
そこでフレームとの接触を無くしてしまえばと思い、マッドガードに付いている取り付け用の金具を曲げ直して曲がっている場所を変えてみた。当初の折れ位置は赤の矢印の部分。硬くて曲げにくかったが無理やり力技で曲げ、ネジ用の穴もヤスリで広げて写真の場所に移動させた。
金具が硬かったので90°に曲げる事が出来ずカーブを描いているが結果的にブレーキアームとも距離が出来てパタパタいう事も無くなった。
欠点としてはマッドガードの外観のカーブが潰れたようになって、気になると言えば気になるかも知れない。
マッドガードの先端の方はフレームから浮くようになり、こすれる事も音がする事も無くなった。
マッドガードに付いているローラーも共振を起こしやすい。ベアリングに変えれば音はしなくなるが少しだけ重くなるし、転がすための車輪ではないので、その必要があるだろうか。
そこで、写真アルバム用のネジ17㎜を使い両方から締め付ける。アルミ製なので軽いし、もしガタが出たらメスネジの方を少し削れば解決する。
こんな感じで高級感は無いがカタカタは言わなくなる。
マッドガードを取ってしまえば、異音のかなりの部分が解消するので、取り去ってしまう人がいるのもうなずける。
3段変速のシフターも樹脂製で華奢なので、走行中の振動に影響されて共振しやすい。新しいうちは問題ないが、だんだんガタが出てきて、この場合は内部にグリースを入れると簡単に振動は止まる。スプレー式のグリースを少し吹き込むだけで解決する。
鳥がさえずる様なキュルキュルという音がする
しばらく走っていると、キュルキュルという非常に高い小鳥がさえずる様な擦れる音が、何処からともなくしてきた。走り始めてしばらくは鳴らないが、休憩をした後になり始めることが多い。
ペダルを漕ぐのを止めて惰性で走っていてもなり続けている。常になるわけではなく、非常に気まぐれに鳴るのだが、鳴る方向としてはどうもフロントのハブが怪しいと感じたので、ハブの中とベアリングを掃除してグリスを詰めて試乗してみたが、やはり気まぐれに鳴り始める。
玉押しをきつくしたり、ガタすれすれに緩くしてみたりしてみたが、やはりしばらく乗っているとキュルキュルと鳴り始める。
ここで本当にフロントハブが原因なのだろうかと疑い始める。そしてスプレー式のオイルを持ったまま、しばらく走ってみて明らかな症状が出た所で、フロントハブにスプレーし状況に変化が無ければ、他の場所を探すことにした。
症状が出ないと困るなという不安も何のその、乗り始めて20分程でキュルキュルと鳴り始め、そこでフロントハブにタイヤを回しながら両側から簡単にオイルをスプレーしてみた。
そして乗ってみると、キュルキュルという音は完全に消滅、退治出来たようだ。
グリスは山の様に入れてあるし、少しずつ外に出てきているので、オイルが足りない想定はしていなかったが、注油で一発解決となると方法は簡単でもちょっと問題もある。
あまり注油しすぎると、グリースにオイルが回り、グリースの方が流れる危険も考えられる。
オイルをスプレーしたことで瞬時に音が止まった事から、キュルキュルという鳥の鳴き声の原因はフロントハブのベアリングにゴミが入らないようにシールドしている一番外側の黒いカバーではないかとの結論に至った。
この黒いカバーのゴムがハブのシャフトと微妙に擦れ合って音が出ていたのではないかと思われる。実際カバーの部分にわずかに注油しただけで音は止まった。
以前にスプレー式のグリースを吹きかけた時には、鳥のさえずりは止まらなかったので、どうも油の粘度の違いのようだ。
音がしてきたら、わずかに注油で直るはず。月一のメンテナンスで十分と思われる。
というより、この場合はハブのグリースを入れなおした方が良いだろう。
ピーヒョロロの原因を探せ
金属とゴムの擦れるピーヒョロロの原因はもう一つある。ペダルを漕ぐのと同じ間隔で鳴るのでペダルが原因ではと疑うが、ペダルを止めて惰性で走っても微妙にピーヒョロロと鳴る。
坂道で力が入るともっと大きい音で鳴るので、再びペダルを疑うが、坂を下りる時にもペダルは回していないのにピーヒョロロと微妙に鳴る。
奇麗な舗装の道だと鳴らない気もして直ったかなと思うと、少し舗装の甘い道に入るとまた鳴り始める。
この場合は一度ブロンプトンを止めてその場でサドルに乗って上下してみる。すると激しくピーヒョロロという場合は、答えは簡単でゴムのサスペンションと中の心金が擦れているのだ。
惰性で走っても道路の振動でサスペンションが擦れるため鳴り続ける。
だからグリースを薄く塗るか、油を少量指すだけで簡単に解決する。
激しく音がすれば簡単に特定できるが、最初のうちはこの原因を探し出すのは、見つければなーんだと思う場所だけに、症状が出たり出なかったりするので非常に難しい。
ただし油を差すのは消極的な解決法で、基本的にはゴム製のサスペンションが劣化しているのだ。
左が縮まって戻らなくなったサスペンション。左のサスペンションは心金と擦れてピーヒョロヒュルヒュルと音がする。
左は新品の内部。右が擦れ音が出始めたサスペンションの内部。
サスペンションと心金の間にはぶつからないだけの隙間があって、新しいうちは擦れる事は無い。それがゴムが弱ってくると押縮められ内部が心金と擦れるようになる。
サスペンションは交換するのが一番良い。縮まったサスペンションはバネの力も弱く、乗り心地に大きく影響する。取り換えた直後の乗り心地の変化に唖然とするかも。
この症状があって、今はサスペンションのハードタイプが付属しているのかも知れない。