ブロンプトンとの始めての出会い


Brompton ブロンプトン
一人の若く美しい女性が電車を待つかたわらに、ブロンプトンはお供でもするような姿で立っていた。
よくある折りたたみ自転車のだらしない姿ではなく、キッチリと真四角にたたまれた一見キャリーのような小さな黒い包みは、カバーの下から車輪とピンクのフレームが見えなければ自転車だとは判らないほどに小さかった。
自分の持ち歩いている自転車と比べて、この綺麗にたたまれた姿に衝撃を受けた私には、女性のピンクのコート(おぼろげな記憶による)とブロンプトンのピンクのフレームが強烈な印象として記憶に刻まれてしまう。
20代前半と思われるオーナーの女性の背後にもピンクのオーラが光り輝いているようにも思えて今では絶世の美人だったような記憶さえ残っている。「馬子にも衣装」 ということわざがあるが、ブロンプトンを傍らに置くだけで美しい女性がより美しく見えるという事を思い知ったのである。

Brompton ブロンプトン
ブロンプトンが他の自転車とはまったく違う自転車だという事が判ってしまったので、他の自転車への興味はすっかり無くなってしまった。
つまり電車への持込を考えるとブロンプトン以外の折りたたみ自転車は考えられなくなってしまったのである。
女性と違ってブロンプトンをかたわらに置くだけでは、男前が上がるとも思えないのだが、それでもブロンプトンのオーナーになりたいという欲求はますます膨らんでいったのだった。

さほど台数的には多くないはずのブロンプトンを街で見かけることが多いのは、他の折りたたみ自転車に比べて休眠車が少なく実働の車体が多いためだろう。
だいたい折りたたみ自転車は何度か遊んだ後は何かと面倒なので部屋の装飾品となっている車体が多い。
ブロンプトンは小さく折りたためるにもかかわらず前後輪間の距離があるため安定していて乗りやすい。クロモリの車体は堅牢で長く乗れる上にモデルチェンジも無いので故障時の部品の調達も容易である。何よりもパンク以外、ギアも含めて故障自体が殆ど無い。
小径車にしてはハンドルがクイック気味でないのもありがたい。
通常折りたたみ自転車はどこかに設計上の無理があるので、買っては見たものの随所に不満が出てくるものなのだ。簡単に直せるものなら良いのだが、生まれながらの根本的な部分に不満があったりすると、ややこしくなる。あそこが不満ならこちらも不満とだんだん愛着が失せてくるのが良くわかる。自転車は車と同じでそのすべてが好きでないと乗るのが楽しくなくなってしまうものなのだろう。


Brompton ブロンプトン
室内に保管する折りたたみ自転車は小さく折りたためればたためるほど邪魔にならないし、屋外に持ち出すときにも小さいほうが気楽に持ち出せる。そして短時間で展開できるというのも重大ポイントで、家の玄関や駅の改札口近くで店を広げて延々と組み立てるような自転車は折りたたみ自転車としては失格だろう。
たたんだり展開している時間は自転車乗りにとっては無駄な時間で、駅を降りたらすぐに自転車に乗りたいし駅に着いたらすぐに改札を入りたいというのは、誰にでもある当然の希望なのだ。
今やブロンプトンに対してまったく不満がないという、あら捜しの達人にしては信じられない程の心境なのだが、今後何か不満が出てくるのだろうか。まあ、ちょっと重いのが気にはなるが軽合金で作られても強度が落ちるほうが乗っていてはるかに怖いので、この事に関しては納得する事にしている。
あ、そうそう靴のかかとがローラーのネジに引っかかるのは気になるけれど、専用の薄いローラーを買えばすむ話だし。まあケチをして時々靴を引っ掛けているだけなのだった。


ブロンプトンは実際のところ、どの位売れているのだろうか。
2011年4月にテレビ東京の 「ワールドビジネスサテライト」 なる番組で折りたたみ自転車の特集の中で売れ筋ランキングがあり 「ワイズロード大宮店」 での5ヶ月間の売り上げ上位10車種が発表されていた。
ブロンプトンは各車種が3,6,8位にランクイン。ちなみに1,2位はブロンプトンの半額で買えるダホンの2車種。
大手自転車販売店とはいえ1店舗だけの集計だし、ブロンプトン、bD-1、ダホンが3車種ずつランクインして、オリバイクが10位に入るなど、各代理店のメンツを公平に立てたような出来すぎのランキングである。販売期間が大震災の直後までの5ヶ月なので、むしろ折りたたみ自転車の必要性が見直された震災後の方が違った結果が出たのかも知れない。
代理店によると、わが国での販売量は10年前が約50台ほどで、現在(2011年4月)が約2,000台とのこと。これまたザックリした数字だが2,000台とすると一台に1万円の儲けをつけても2,000万円、2万円で4,000万円か。何十万と数が出るものと違って超人気とは言っても、自転車は代理店も中々大変だな。もっともブロンプトンだけ扱っている訳ではないので商売としては成立っているのだろう。
ブロンプトン本社での生産台数は年間2万台ほどから少しずつ増えているようだ。