狙われたブロンプトン


全国のJRグループ共通の 「手回り品のご案内」 のポスターが主要駅に張ってあった。
その中に明らかにブロンプトンと思われるイラストが書いてあって、しかもご丁寧に輪行バックの中から自転車の一部がとび出ている場合もイラスト付きで不可とある。つまり、イージーカバーの下から小さな車輪がでているのもダメだし、サドルを出して引っ張るのもダメ。もちろん、ハンドルを立てて押すなどもってのほか、という事だ。

2009年に関東で張り出されていたポスターはJR東日本と在京私鉄各社が共同で作成したもので、自転車は折りたたむか解体して専用の袋に入れて、電車に持ち込むようにという内容しか書かれていなかった。
コロコロに対する記述は無く、ブロンプトンのイージーカバーも上からかぶせはするが、専用の袋には違いが無いので、私達も安心して電車に持ち込んでいた。



しかし、今回のポスターはブロンプトンであっても 「専用の輪行袋に完全に収納」 という事なので、上からかぶせて車輪が出るイージーカバーは使えなくなってしまった。これはブロンプトンが狙い撃ちされたというよりも、「ブロンプトンでさえダメなんだよ」 と、他の自転車すべてに網をかぶせたと考える方が当たっているだろう。

誰が見てもバッグからブロンプトンのサドルとハンドルが飛び出しているイラスト。
ブロンプトンが構内でコロコロやっているのが目に付きやすかったのは間違い無さそうだが、他の折りたたんでもブロンプトンほど小さくならない転がすタイプの自転車の方が影響は大きいと思う。完全にバッグに入れなければならなくなると巨大なバッグが必要になるし、そもそも車輪そのものを転がして移動することを前提にして作られた折りたたみ自転車もある。


ただし、この可否を実際に判断するのは改札口のJRの駅員さんなので、イージーカバーをかぶせただけでコロコロ改札口を通っても通してくれる可能性は十分にある。だが、帰路に改札口で厳格な駅員さんに引っかかってしまう可能性も無いとは言えない。ポスターには 「詳しくは、ご乗車前に駅係員にお問い合わせください」 とあるので、結局駅員さんの裁量次第という事らしい。

そして運良く改札口を通過できたとしても、やはりこの様なポスターが出てしまったからには、乗り合わせた乗客の何人かはポスターを見ている可能性がある。
知っている人達は少しは不愉快に思うかも知れないし、こちらも引け目に感じたりすると、せっかくの輪行が楽しくなくなる。だいたい車内では、扉が開くまで逃げることが出来ないので、ケースによってはシルバーシートでタイミングを逸して寝たふりをするときの心境にでもなったら大変だ。

そして専用の輪行バッグ作成

ブロンプトンの構内をコロコロ転がせるという特技が使えなくなってしまったのは非常に残念なのだが、小さくたためて自立するという特徴は、他の自転車には無い魅力なので、専用の輪行バッグを作ってみた。

使用した元のバッグはCAPTAIN STAGの定価でも3000円程の輪行バッグ。オリジナルの大きさはカタログ値、820×380×550mmなのでブロンプトンにはかなり大きい。

まず、バッグを両サイドとファスナーの付いた輪になる部分に解体する。

糸が頑丈なので根気が要る作業だ。短気を起こして力任せに引っ張ると生地が傷むので、ともかく解体だけでも半日がかりの覚悟で始める。ベルトの付きかたが変わっているので、片方だけを外して後で付け替える事にする。ベルトの部分をはがすのは糸目がわかり難くて非常に大変、バッグの内側からだとベルト以外の糸があって難しい。途中まではがしたら、ベルトを引っ張りながら布とベルトの間を一本ずつ切っていった。

次にブロンプトンのサイズに生地をカットし、ファスナー部分はファスナーの長さはそのままで、下の生地部分だけを詰める。

ブロンプトンの場合はバッグに上から入れるというよりも、片側は下まで開いていたほうがイージーホイールもあるので転がして入れやすい。


出来上がりの内径サイズは610×530×245mm。縫いしろを6mmずつ取るので寸断サイズはその分大きくなる。仮縫いしながら実際にブロンプトンを入れながら作ると失敗が無いと思う。大まかな段階ではホッチキスを使うと便利。



底の部分にはローラーを2個付けるので引っ張ることも出来る。ローラーの裏側には小さなベニヤ板が貼ってある。このベニヤ板の部分にブロンプトンのイージーホイールが乗ることになる。


折りたたむとローラー部分だけが飛び出す感じになる。


バッグは大きく開くのでブロンプトンを入れやすい。口は経験上、大きければ大きいほど出し入れが容易。



ベニヤ板の上に乗るイージーホイール。この部分は改良の余地はあるのだが、これだ!というアイディアが今のところ浮かばず。


底の部分が入ったら、ファスナーを締める。結構きっちり作ったのでサドルによっては、入らないかもしれない。


ファスナーを締めたところ。ファスナーを一部開けて、そこから手を入れてフレームを持って以前の様に運ぶことももちろん可能。



そして、バッグの中でブロンプトンが動かないように上部2箇所、前後一箇所ずつに締め付け用のベルトを装着。


4箇所のベルトで締め付けると、きっちり動かなくなると共に、全体の印象も締まって小さく見える。


ブロンプトンの折りたたみ時の薄さは、どんなバッグに入れようと他の追随を許さない。


運搬の実際

そして、実際に運ぶだんになると、やはり小さくてもローラーが威力を発揮する。

長い距離を肩に担いだり、手で持つのはブロンプトンは重くて大変。こんな小さなローラーでも実際に使ってみると、信じられないくらいありがたい。


小さな取っ手を付けたので、この様に引っ張って行ける。手には5Kg程度の重さは感じるが、駅の構内くらいなら十分に引っ張って歩ける。


かつての様に階段では手を入れて持つと楽に持てる・



肩に担ぐことも可能。力持ちなら楽勝だが、ブロンプトンは肩に担ぐには結構重い。これからはチタン製を欲しがる人が増えるかもしれない。


電車の中では座席の端に置けば乗客に迷惑がかからないで綺麗に収まる。ただし、急停車に備えてベルト部分のどこかは手で持っている必要がある。


航空機への搭載



この輪行バッグの状態で国内線に乗ってみた。使用した航空会社はスカイマーク。折りたたんだこの状態で預けると1,500円ほど別料金がかかった。

取り扱い注意の札が付いて横に自転車の記述もある。
結果的には往路で、左折りたたみペダルがフレームに当たるのを防止するために、クランクに自分で接着剤で付けておいたゴムのストッパーが、取れたぐらいで何の問題なく運ぶことが出来た。


帰路はもっと丁寧で、ベルトコンベアーでは無く、係員に呼ばれて出口で直接渡された。
ベルトコンベアーからはビニール袋に入れただけのバギーが複数台出てきていたので、特に硬質のスーツケースに入れないとつぶされるという事も今は無いようだ。
タイヤの空気もパンパンに入っていたが1時間半の空の旅では特に気圧による問題も起きなかった。


その後、ちょっと改良


使っているうちに後部がすれている事に気がついた。布がすれて中からベニヤ板が見えるようになった。

ローラーの間隔が狭いせいか左右に傾いたときにすれてしまったようだ。


アップで見ると緊急を要する切れ方。すぐに修理をすることにする。


すれた部分にまず小さな布を貼り、その上に大きな布を貼って、その上からすれない様にローラーを2個追加した。これですれの問題は解消。


内側には硬質スポンジを貼ってイージーホイールが動きにくいようにした。バッグに入れた状態で何日も置いておくとイージーホイールの跡が付いて、安定しそうな気がする。
使っている内に問題点が出てくる可能性もあるので、随時改良予定。


予備に便利かも

IKEAにブロンプトンがちょうど入るDIMPAという簡易バッグを299円で売っている。


もともとは衣類などを保管しておく袋で、常用するには強度が心配だが、いざというときのために持っておくとパンクなどの非常時に、これで電車に乗れるだろう。


DINPAはポリプロピレン製で、持った感じは羽の様に軽く思えたのだが、計ってみると200gを超えていた。ブロンプトンの替えられるネジをすべてチタン製にしても100gも軽くならない事を考えると、太るのは簡単だがダイエットは容易ではない事実を思い知らされる。


ブロンプトンを入れてみると若干の余裕はあるものの、スケルトン過ぎるのを気にしなければ、専用かと思うくらいピッタリのバッグだ。