台湾ブロンプトンを5段化


台湾ブロンプトンの3段ギアのトップが利かなくなった。以前から時々入らないときがあって不穏な動作をしていたのだが、ついにトップ無しの内装2段ブロンプトンになってしまった。
トップは殆ど使わない人もいるらしいのだが、川沿いを走ったりするときにはトップギアは必須なので、何とか自分で直そうかと思い、後輪を外して3段ハブを解体してみることにした。

どうせ、オイルが固まってギアがスムースに動けなくなっている位のことだから掃除でもすれば直るだろうと思っていたのだが、解体を始めてみると、ガチャガチャやっているうちに小さなバネが外れてどこかにいってしまった。
若い頃なら頑張ってみる選択支もあったのだが、からきし粘りが無くなる年頃で、手は油で真っ黒になるし、そのうち何かが引っかかっているらしく軸がセンターに収まらなくなり、いびつな状態になってしまった。
上手に修理できる人は、何個かは私の様に壊して授業料をたっぷり払っているのではないだろうか。



タイヤもすり減っているのは判っていたのだが、良く見るとタイヤの中の補強材などが飛び出るほどすり減っていて、これは毛ブラー状態だ。
こうなると、後輪ごと交換したほうが早いと決断し、最近良く聞く内装5段化に挑戦することにした。

丈夫なチューブ



後輪からタイヤを取るとパンク歴ゼロのチューブが出てきた。口金の下にはサビが回っているが本当に丈夫なチューブだった。


チューブには CHENG SHIN TUBE 16X1 3/8 Made in Taiwan と書いてある。
チェンシンという会社は今も健在だがブロンプトン用の小さいタイヤやチューブを日本で販売しているかどうかは判らなかった。


さて台湾ブロンプトンの後輪の重さを量ってみると 1.532Kg ある。


意外と軽い



そしてこちらはオークションで台湾から取り寄せた5段のハブとホイールのセット。重さを量ってみると何と 1.553Kg しかなく21g重くなっただけで殆ど3段と変わらない。15Tのギアもつけた重さなので実質は殆ど変わらないようだ。


ここからが台湾ブロンプトン5段化への短い道のりとなる。フレームとセットの状態で買ったので、最初に付属の15Tの歯車をはめ込む。少しだけ本体側にバリがあってスムースに入らないためヤスリでバリを取り除いた。


外装2段にはしないので付属のダミーのワッシャーをはめる。



そしてバネのOリングを溝にはめ込んで固定するのだが、結構これが力技。外すときにはマイナスドライバーを溝に差し込んでグイッとやればあっという間に外れるのだが、はめ込む方はコツが必要なようだ。


私は左手でドライバーを持ちリングが跳ね上がらないようにしておいて、右手のラジオペンチで片方を引っ張って押し込む感じではめ込んだ。Oリングが引っかかってしまえば、指でもポンと押し込めるのだが結構な力が必要。


これでタイヤを付ければ本体に装着するのみ。


後輪を装着



シュワルベのフランス式バルブの4SVチューブにシュワルベのマラソン35-349 16×1.35を装着。値段は安いが少し重い。もう少し支払って軽いタイヤを選べば良かったかもと思う。


そして、台湾ブロンプトンに後輪を取り付けると、15Tギアと近いほうのプーリーが異様に接近している。回して見ると問題は無いはずなのだが危ない気はする。
15Tのギアの表面には 1/2X3/32 とあり、これは外装変則用の薄い歯。クランクの方は厚歯なので、やはりどちらかに揃えたほうが気分は良いのだろう。まあ薄歯でも普通のチェーンは使える筈なのでとりあえずこのまま気にせず進行。



後輪が装着できたので試走してみると坂道はとてつもなく楽になった。一番遅い坂道用の1速は内装変速機が大活躍しているらしく大きな音でカラカラ言っているのだが、たぶんこれで正常なのだろう。


調整はシフターをロー側の1速に引っ張った状態で穴からチェーンに付けられた緑の色が見えるあたりが基本点で、ここから引いたり緩めたりしながら5つのギアが上手く入るベストポジションを見つける事になる。

後輪の歯車が13Tから15Tになった事で少しチェーンが短くなったので、ついでにチェーンも替える事にした。

チェーンカッターは必要なのでSHIMANOのTL-CN27を用意。自転車屋さんにはこれしか無く選択支は無し。



チェーンはKMCの2C-2と書いてある1000円位の一番安いものを選択。理由は写真では良く判らないが一番銀色に光り輝いていたから。


二コマ分伸ばした長さで取り付けるとテンショナーの具合も良い感じになりました。


しばらく乗っているのだが、確かに登れない坂も簡単に登れるようになったし、ギアのチェンジも確実に入るようになってきた。
それでも、余計なギアの2,3個を引きずっているような引っ張られ感は3段の時とは比較にならない位あって、普段外装変速機に乗っている人が急に乗ったらびっくりするだろうナ。
ペダルを逆回しにすると、その抵抗感はものすごく、惰性ではカラカラとまったく回らない。2速、3速は若干軽くはなるが全体に誰かが悪戯に何処かを押さえている感じ。これは仕様なのだろうか?私だけなのだろうか?他の人達はどうなっているのか50台くらい、この5段変速を見てみたい。もっともべダルの位置を調整するとき位しか逆に回す事も無いし、前に進む分には関係無い話なのだが気にはなる。
この辺りが英国ブロンプトンが何故か5段変速を採用しない原因かもと思ってみたりした。
ところがスターメーアーチャーの5段変速機がそんなチャチなモノであるはずも無かった。
どうもチェーン・テンショナーがおかしいので見てみると、長い間テンションが掛かっていたためにテンショナーがよじれて変形している。台湾製のテンショナーは材質が若干柔らかくグニャグニャしているので10年以上も経つとこんな具合に変形してしまうのだ。
普通の金属製の外装変速機のように衝撃で変形する事は無いが、樹脂製は一旦変形してしまうと元に戻すのは不可能。


そこで、テンショナーを英国製の新品に交換すると今までの悩みは何だったのか嘘の様に快調に動き出した。
ペダルの反転が上手く出来ない場合やチェーンが外れやすい場合はテンショナーの劣化を疑えという事が良くわかった。このテンショナーの交換による変化は劇的なもので、すべてのものが快調に動き出した。
そして5段変速が非常に素晴らしいものであるのも実感できた。
もともと内装変速機なので抵抗が外装よりはあるし、おまけに折りたたみ用のこのテンショナーまで付いているので、二重苦によるペダルの重さは確かに残る。ただ普通の速度で走っている限り慣れてしまうし、要するに乗っている人間が何が気になって何に譲れないかだろう。


イギリス製のテンショナーはしっかりしていて台湾製のブロンプトンにもピッタリはまった。チェーンラインが少しだけ内側に入るのでワッシャーなどで補正が必要。それよりも新しい発見もあった。



こちらは取り外した台湾製のテンショナーだがご覧の様に放射状に付いている出っぱりが、折りたたんだ際に前輪のスポークが当たってすり減っている。折りたたんだ際に、このテンショナーの長いほうのプーリーをタイヤが押して変形の一因にもなっていたと思われるのだが、英国製のテンショナーに替えたとたんにタイヤがプーリーを押す症状が無くなり、綺麗に折りたためるようになった。原因は英国製のテンショナーのプラスチックの中心部分がスポークが押されるのを止めていて、前輪タイヤがテンショナーを押し曲げる事が無くなったわけだ。
こんな細かいところまで少しずつ進化を続けているブロンプトン。

さて5段変速の調整は慣れるまでは結構難しい。特に3速はレンジが非常に狭く調整がずれていると2速から4速に飛び越したりする。ただし3速が入りさえすれば残りの1、2、4、5速は問題なく入るので、3速だけを気にかけていれば良いようだ。3速以外で調整しようとすると行ったり来たりで悩むことになるので、3速でしばらく走ってみて何かの拍子に2速に勝手に入ったりするようなら調整ネジを少し緩める。4速に入るようなら、ネジを少し締める。
これが判ってからは調整がとても楽になった。
1速は相変わらず変速ハブ内部でガラガラと沢山の歯車が回っている感じで、足にもはっきり感じるほどの抵抗があるのだが、2速から上は慣れてしまった。

かくして5段変速も完成に近づいているのだが、どうしても気に入らないのがシフターで、折りたたんだ時に前輪のスポークと干渉してしまう場所にしか取り付けられない。
そこでブレーキレバーを一つ壊し、レバーの台座とシフターの回転部分を縦に合体させて、折りたたんだ時に干渉しないようにした。



シフターを前から見たところ。工作は雑だがマジックで黒く塗れば問題なし。現在5速の状態で左に倒していくと軽くなる。これも逆だったのが、使い慣れた3速のシフターの動きと一緒になったので感覚的にストレスが無い。


折りたたんだときもスポークと干渉せず縦にピッタリ収まっている。
ブロンプトン社の社史に内装変速の記述がある。
ブロンプトンにはかつて内装の3速と5速のラインナップの時代があった。
ブロンプトンは2000年当時、イギリスのスターメーアーチャーの3段ハブギアと5段ハブギアのみを使用して生産していたが、2000年9月のスターメーアーチャー社の倒産によって、内装変速ハブ供給先のすべてを失ってしまう。
半年後には、ドイツのスラム社の3段変速ハブギアに切り替えたが、スラム社にはブロンプトン用の5段変速ギアは無かったため、新たに自力で外装2段変速を開発し、スラムの内装3段と合わせて1年後に6段変速をラインナップに加えた。
スターメーアーチャーが台湾資本の元で変速ハブの生産を再開した現在でも、2000年の教訓からリスク分散のため、両社から変速ハブの供給を受け、自社開発の外装2段変速と組み合わせて、1段、2段、3段、6段の4種類の製品を生産している。
リスク分散のためなので、スラム社に無い内装5段変速はラインナップには加えられないだろうし、もともとサイズの違うシマノのハブギアも採用される可能性は無いようだ。