カナダからの手紙


hummingbird-hostel カナダの子持ち昆布漁

はい、現地特派員のゆきです。

2002年3月26日午後6時15分、
漁師に貰ったこの海域特産種のアサリ様で作ったクラムチャウダーをすすっているところへ、今年初のハミングバードが戻ってきました。
濡れた赤茶色のボディーにメタリックレッドの喉を持つ、ルーファスハミングバード(日本名アカフトオハチドリ)の雄です。
ハチドリが戻って来た! 春です!!

ということで、今回は春の風物詩、
インディアンの子持ち昆布漁についてレポートしてみたいと思います。

3月9日、雨。
ニシンの生け簀のところで、シーライオン(トド)の攻撃から生け簀を守るインディアン達が、シャチの家族を見た、と言っていました。

5頭の家族のうち何頭かはまだ子供で、1頭なんかはまだ1mたらずのほんの赤ちゃんだったそうでした。

3月10日、今日も雨。シャチ、見たいなぁ、と言っていたら、インディアン村の漁業監視船が生け簀まで乗せていってくれることになりました。
ラッキー!!
釣り人達の休日
小雨降る中、ニシンの追い込み漁開始
2002/03/11
ニシンの生け簀は村から20kmくらい北の入り江にあります。
30分ほどスピードボートでぶっ飛ばして現地に着くと、ちょうど今まさに、インディアン漁船がニシンの追い込み漁を開始するところでした。



釣り人達の休日
船尾にくっついている小型艇に注目
2002/03/11
生け簀の周りでうねうねと蛇行を繰り返していた大型漁船の船尾に、半分乗り上げるような形でくっついていた小型艇が、繋がれた漁網と共に、するするする!と海面を滑るように解放されました。
釣り人達の休日
網を下ろし円を描いていく漁船  2002/03/11
「そら、始まった!」
グオー!!


漁船と小型艇とで円を描いて網を張っていく光景は思わず引き込まれてしまったほどの大迫力!
一周して漁船と小型艇が落ち合い網を閉じると、大型漁船はエンジン停止。

小型艇が一気に網の外に躍り出て、大型漁船そのものを牽引して、潮の流れや網の状態を考慮に入れながら生け簀まで誘導します。
釣り人達の休日
漁船はスクリュー停止。小型艇で生け簀に誘導。
2002/03/11
「Yuki、見てみろ」
漁業監視船の魚群探知機に映った映像は、とてつもないニシンの大群が水面下に渦巻いていることを示していました。

こ、こいつは……、すごい!
突然漁船の甲板があわただしくなりました。

漁船が潮に流されています。
「小型艇のエンジンがおかしい。
この船で引くぞ! Yuki! 方向を指示しろ!」


て、ええ?!
そんなこと言われても分かんないよ!
「わーっ、くそ」 小型艇から投げられたロープを船尾に巻き付けて、うわ、まだ待ってって言ってるのに、漁業監視船は既にエンジン全開。

結んでいる暇など無い。

「Yuki! ロープの上に乗っかっていろ!」
漁船の甲板からは漁師達が血相を変えながら
こちらに方向を指示してきます。



「ひだりひだり、もっと左! 今度は右! 右!」
エンジン音に消されないようにぼくも全開で叫びます。

釣り人達の休日
生け簀まで引っ張ってきました
2002/03/11
生け簀へ、生け簀へもうちょっと! がんばれ! 来た!
生け簀まで引っ張ってきました。
「Yuki! ロープを放せ!」

ロープを解放するとすぐさまボートを旋回させて漁船に横付け。
間髪おかず甲板に飛び移ると、漁師達が必死に網を引っ張り上げています。

くそっ、
思わずぼくも飛びついてがむしゃらに網を引っ張ります。
ローラーでどんどん網が巻き取られていく際に、たるんでいる部分を引っ張り上げてやらないと、そのたるみにとんでもない量のニシンが入り込んでしまうのです。

釣り人達の休日
網が巻き上げられて、行き場の無くなったニシンの大群が浮上
2002/03/11
いよいよ網の底が近づいてきました。
とてつもないニシンの大群です。
すごいすごいすごい!
逃げ場が無くなって生け簀の方にどどーっと流れていきます。
網を閉じて、第1回目終了。


釣り人達の休日直ぐさま漁船はエンジン始動、2回目の漁を開始しました。
漁船の小型艇のエンジンの調整も間に合ったようなので、
漁業監視官達とぼくとは戦線離脱。
すぐ目の前の波打ち際にボートが近づいていきました。

釣り人達の休日すると、か、牡蠣が、
巨大な牡蠣がごろごろと転がっていて、もはや海底が見えないほどです。
それにしても、でかい!
どれも15cmや20cmは軽く超えています。
釣り人達の休日10個ばかしひょひょひょいっと拾いました。
生け簀に戻ると、既に3回目の追い込みが終わり間近です。

網の底にでっかいダンジネスクラブ(カニ)が二匹引っかかっていて、
インディアン達が口々に「Yukiにやろうぜ」と言って投げてくれました。

釣り人達の休日二匹とも甲羅の横の長さだけでも23cm。
こんな大きなダンジネスクラブは始めてみました。
日も暮れてきたので、今日の追い込み漁はこれでおしまい。
今度は電灯の明かりの下、昆布におもりを付けて、ロープに結んで生け簀に沈める作業が始まりました。
この雨の中、インディアン、めちゃくちゃ働くなぁ。

だれだ、インディアン怠け者、なんて言ったの?
あ、ぼくです。すいません。

ところで、ホントはシャチの家族が見たくて着いてきたのに、シャチのことなんかすっかり忘れちゃってました。
ま、しょうがないスね。

つづく。


子持ち昆布漁について
釣り人達の休日
子持ち昆布の塩漬け
2002/03/14
子持ち昆布についてですが、ニシンの卵が数の子で、数の子が昆布に産み付けられている状態が「子持ち昆布」なのです。
ということで、子持ち昆布の漁は、まずニシンを生け簀に追い込んで、そこに卵を産み付けるための昆布をたらしてやるわけです。
そして卵が植え付けられたところで収穫して塩漬けにします。
全部日本向けですよ。

居酒屋やスーパーなどでも当たり前に見かける「シシャモ」。子持ちシシヤモなんか美味しいですよね。あのシシャモ、実はまず偽物なんです。本物のシシャモは数が激減しちゃってるので、高級料亭とかでしかお目にかかれないんじゃないでしょうか。

で、実際にぼくたちが普通に安く食べることの出来るシシャモは、カナダ東海岸で獲れる「カペリン」という魚です。こういう、日本産のオリジナルが激減しちゃったので、外国のちょっと似たようなやつで代用しちゃえ! という魚は他にもいーっぱいあります。日本のテレビでやってました。

そしてまた子持ち昆布の話に戻りますが、日本では寿司ネタなんかにも使われる子持ち昆布……、よほど高価なものでない限り、最近ではほとんどが、上記の偽シシャモ(カペリン)の卵を“薬品で”昆布に張り付けたものらしいです。

いかん! いかんです!
子持ち昆布自体が偽物な上に、その卵の主のシシャモまで偽物とは。
そうならそうと言ってよ、言ってくれればべつに気にしないんだからさ、て感じです(個人的には)。

まぁ、全ての人を対象に穏便に済ますには、何でもかんでも言わない方が正解ですけどね。

ぼくが記事にしている子持ち昆布は、もちろん、本物中の本物です。
そりゃあ、北海道なんかの国産のやつの方が金銭的な価値はうんと高いですけど(国産のは、希少価値のある黄金のダイヤ状態、だとインターネットのどこかで読みました)。  by Yuki

このレポートはHummingbird International Hostelのユキ様より頂いています。