カナダからの手紙


hummingbird-hostel 【前略 ハミングバードホステルより】 ハミングバードホステル(1)
by ユキ 08/30/00


カナダ西海岸、バンクーバーアイランドの太平洋側、自然豊かなクレイオクオットサウンドの中腹に、北米最大級のインディアン居留地を擁するフローレスアイランドという島がある。そのインディアン居留地と入り江を挟んでボートで2分くらいの対岸にある、家がたったの3軒、しかしジェネラルストアからモーテル、レストラン、ガソリンスタンド、漁船の修理用ドックまで、ありとあらゆる物が揃っている、なんともユニークな土地がアホーザットだ。
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初めてアホーザットを訪れたのは、1997年6月半ばのことだった。この土地の所有者ミスター・クラークの甥っ子ジョン・フォスターに、父親の漁船のペンキ塗りを手伝ってくれと言われて連れてこられたのが、ここ、アホーザットのドックであった。

ほんの数日のことだったが、広大な大自然に圧倒された。頭上にはボールドイーグル(白頭鷲)、ほんの150メートルほどの入り江の対岸を、狼やブラックベアが歩いている。そのブラックベアが、入り江を泳いで渡るのも2度ほど見た。手漕ぎのボートでラグーンの散策に行けば、ラッコやアザラシがヒョイ!と顔を出す。タイミング次第では、鯨だって触れるほど目の前まで寄ってくるという。

カナダはすごいね。

日本人が珍しいらしく、地元の漁師やインディアンの人達が、取り立てのサーモンやらカニ、ウニ、ボタンエビ、カレイなんかを次から次へと持ってきてくれた。とてもじゃないけど、食べ切れないよ。

食事が終わって、昔は海だったところをミスター・クラークが埋め立てて陸にしてしまったというストアの前の道を歩いていると、「ジジーッ!」とけたたましい鳴き声を発して、さながらジェット戦闘機のように飛び交っている生き物がいる。あまりに早すぎて、姿がはっきりととらえられない。

見上げると、電線に小鳥がたくさんとまっていた。チュンチュン、と鳴いているので、ああ、カナダにも雀がいるんだな、と思っていたら、そうではない。そのうちの2~3羽が飛び立ち、さっきの「ジー!!」という鳴き声とともに、ぼくの体ぎりぎりを擦り抜けていった。そしてもう一羽、ものすごい勢いで急降下してきたと思ったら、とつぜん、ぼくの顔の前30~40センチのところで静止した! ブ~ンという音を立てながらホバリングして、ひとの顔をじぃーっと見ている。なんだこの鳥?鳥だよね?

小鳥は唖然と見つめるぼくの鼻先でゆっくりくる~っと背を向けると、一瞬で視界から消えさるほどの猛スピードで飛び去った。「す…っごいな、あれ」ホバリングによる静止飛行から前進後進上下左右、あらゆる方向への移動を可能とする鳥類、ハミングバード。このときの印象が、強烈だったんですよねぇ。

で、それから2年後、1999年の7月、このアホーザットでバックパッカーズホステルを開くことになったとき、ぼくが迷わず命名したのが、そうです「ハミングバード・ホステル」です。

このレポートはHummingbird International Hostelのユキ様より頂いています。