カナダからの手紙


hummingbird-hostel 【前略 ハミングバードホステルより】 ハミングバードホステル(2)
by ユキ 09/08/00


ホステルのマネージャーなんて仕事をしていて不特定多数の人達と接していると、人それぞれ全然違った常識を持っていることにとまどうことがあります。 このあいだ、うちのホステルに日本人の若いカップルが泊まりにきました。どういう経緯だったのかは忘れましたが、ぼくたちは、インドでうんこをしたあと、指で肛門を洗うことの難しさについて話し合っていました。
◇◇◇

これはですね、具体的に言うと、肛門に付着しているうんこに直接アタックをかけるのは不浄の手である左手の役目なんですが(ぼくはの場合は薬指かな)、右手でですね、こう、コップとか空き缶とかを使って、えー、おそらくバケツ等に汲み置きしてある水をすくいまして、それを後ろからお尻に流しつつ、指でえいえい、ごしごし、とこすって、そのコンビネーションできれいきれいにするわけです。これがさ、けっこう難しいんですよ。やったことあります? 難しいっすよ! 何が難しいって、とにかくその、水をかけるときにですね、シャツを濡らさないように、とか気を使ってお尻をヒョイ、と持ち上げちゃったりするとですよ、うんこで汚染された水が手のひらにジャアアア。きゃあああ、なんて悲鳴を上げてパニックを起こそうものなら、さらに汚水はタマタマと大事な棒の先を伝って、パンツ、ズボン、あるいは靴までも、と、取り返しのつかない汚染区域の拡大が引き起こされるのです。あれはね、技術ですよ。ひとつの技術。右手左手お尻の高さ、絶妙なボディバランスを駆使してのみ成功される、肛門オンリーへのピンポイント洗浄。うまくお尻が洗えるようになったときは、思いのほか嬉しいもんです。うんこするたびあれだけ脳味噌を使っていたら、インド人てボケたりなんてしないんじゃないかな? どうでしょう?(長嶋風)

あ、本題はそれではなかった。えー、そのときにですね、ぼくは「目の覚める思いがしました」と、そう、その日本人のカップルに言ったんですね。そのうんこを指で拭くという行為によって、あ、ぼくはその頃28歳になりたてでしたが、あの、うんこがどーしても、何度拭いてもどーしてもどーしても拭ききれないときってあるじゃないですか、そういうときにいったい肛門周辺ではいったいどういう現象が起こっているのか、なぜなかなか拭ききれないのか、そのメカニズムが解りました、と。ぼくはもう何年も世界を放浪して、いろいろな経験もして、世の中のこともだいぶ解ってきたような気もしていたけど、なに、実際は28にもなって、たかが自分のけつの穴のことさえも今まで解っていなかったよ。いや、ホント目が覚める思いがしましたよ、てね。

でもね、その日本人のカップルには驚かれちゃったんですよね。「ええ?ゆきさん、それまで肛門さわったことなかったんですか?」て。

「ええ? なかったけど、なんかおかしい?」
「な、なかったって、じゃあ風呂に入ったときは今までどうやって洗ってたんですか? 指でこう、ひだの一本一本まで洗うものでしょう? 33歳にもなってそんなことも知らないできたんですか?」
え? そうなの? そ、そういうもの? あ、今日もう一人泊まってる日本人のお姉さんがやってきたので聞いてみよう。
「えー、この件につきましてどう思います?」
「指でひだの一本一本まで洗うものです」

このレポートはHummingbird International Hostelのユキ様より頂いています。