「フルサト」by ハイフェッツ


第115章 才能を見た!


(2009年7月31日)

 最近、素晴らしい演奏家に出会いました。今日はそんな出会いをぜひ紹介したいと思いました。

 私は、プロのものアマチュアのものも含めて、年間30件ほどのライブに出かけます。音楽を聴くのが大好きで・・・ということが第一です。音楽に傾倒する熱意には深く感動することが大きな喜びであると同時に、、時々ハッとさせられる演奏に出会うこともまた楽しい。凄い宝物を見たような、嬉しい瞬間です。そうした感動は長い間心に残り、気づかぬうちに私の精神生活を潤しているのだと、思っています。

 沖縄音楽のライブがあるというので、出かけてみました。「出演者は来てのお楽しみに!」ということだそうで、やや冒険かなと思いつつも、「絶対損はさせないから!」というスタッフの言葉と感性を信じて、会場へ入りました。会場は、沖縄料理店の2階の大広間であり、テーブルに料理が準備され、聴衆が飲み食いをはじめています。ここで歌会が始まるのですね。

 さて、バンドメンバーが登場!

 私はここで飛び上がりました! 今日のライブの出演は何と「チャンプルーズ喜納啓子&ファミリーズ」でした! 喜納啓子さんは、御存知「喜納昌吉&チャンプルーズ」のメンバーであり、喜納昌吉の実妹にあたります。兄の喜納昌吉とともに世界中で沖縄サウンズを広げてきた立役者であり、カリスマというよりレジェンドです。その喜納啓子さんの息子さん、お孫さんで構成したバンドが、「チャンプルーズ喜納啓子&ファミリーズ」です。

 私以外の聴衆も、予期せぬ大物の登場に興奮気味に手をたたき歓声をあげます。

 喜納啓子を筆頭に、息子のマサシ・エドワードの三線、孫娘2人の透き通った高い声とサンバの見事な手さばき。

 喜納啓子さんは言うまでもなく本物の歌手ですね。アレンジも素晴らしい。芭蕉布・涙そうそう・島人ぬ宝・てぃんさぐぬ花などの定番曲も、夏川りみさんのアプローチとは全く違っています。夏川さんのコンサートツアーで聴けるような、たくさんの楽器を使った響きも素晴らしいのですが、喜納啓子ファミリーズの演奏はそれを凌駕しますね。歌のこころが伝わってくるんですね。

 さて、出会った才能。喜納啓子さんのことではありません。喜納啓子さんは大ベテランで押しも押されもせぬレジェンドでありますから。

 私がその才能に感心したのは、啓子さんの息子マサシ・エドワードさんです。三線の名手です。実に豊かな響きと、長間たかお直伝の早弾きのテクニックを持ち合わせたオールラウンドプレイヤーです。彼は今現在なんと19歳! しかも三線は2年前に始めたばかり。めきめきと上達し、教えられもしないのにどんどんとテクニックを吸収していくそうです。私は、長間たかおのライブを2度聴いたことがありますが、早弾きのテクニックはまるで「三線の神が降りてきた」と思えるほどです。聴いて見ているこちらの胸が熱くなってくる力を持っています。マサシ・エドワードさんはわずか2年で、長間たかおに迫るものを身につけつつある。ある日突然、開花したように一気に上り詰めたといいます。天才、といっていいと思います。

 天才的なところは、聴いていてもわかりました。常に余裕があるのですね。彼の演奏姿を見ているだけで限りない可能性を感じました。早弾きができるというだけではありません。早弾きテクが誰よりも優れる、ということよりも、小さな音3つを如何に表現するか、ということのほうが音楽としては遥かに大事です。しかし彼はその点でも、「聴かせて、魅せる奏者」になりつつあります。まさに「三線の申し子」といったところです。言葉では表現しにくいです。是非一度聴いてみてください。なかなか都内や関東ではお目にかかれないでしょうが。

 沖縄音楽は奥が深く、膨大なレパートリーを抱えています。彼がそれを身につけていくには経験なのでしょうか。しかし彼なら必ずやり遂げるでしょう! そしていつか、長間たかおを超えて、自身のオリジナリティーを形にしてほしいと思いました。それをファンとして見守っていきたいと思います。

 彼、マサシ・エドワードに乾杯!
  もちろん、喜納啓子さんにも乾杯!

フルサト エッセイ 2009


夏川りみさんと遊ぼう