「フルサト」by ハイフェッツ


第106章 「風の時代」から「うたの時代」へ


(2009年3月6日)

 これまでの私のオリジナルアルバムのタイトルには、必ず「風(かじ)」という言葉を入れてもらっています。私の歌、いろいろな想いを素敵なメロディーに乗せて、心地よい風のように届けたい・・・そういう想いから、今回のアルバムのタイトルも『想い風(うむいかじ)』とつけさせていただきました。

 上述の言葉は、2007年3月に発売のアルバム『想い風』のキャンペーンのときに、夏川さんご自身が語っておられた言葉です。この「想い風」以前には、「南風」はじめ「沖縄の風」「彩風の音」など「風」という言葉が入ったタイトルのアルバムになっており、内容も、文字通り心地よくも力強い「風」を感じさせてくれるものでした。また、このエッセイのタイトルにも使わせていただいた「フルサト」が収録されているということもあり、私にとっても忘れ得ぬアルバムです。

 2007年後半以降、出されたアルバムからは、タイトルに「風」という言葉は使われなくなりましたね。所属事務所の移籍もあり、心機一転。しばらくの休養のあと、活動再開にあたり取り組んだのが『歌さがしの旅』でした。

 アルバム『歌さがし~リクエストカバーアルバム』。すべての収録曲をファンや周囲の人々のリクエストから選曲し、夏川りみがもっとも夏川りみらしく歌える曲を探そう。そういう企画でしたね。私自身は、このアルバムにはまりましたね。

 半年後にはニューオリジナルアルバム『あいのうた』。夏川さん自身の持ち歌たちを、もう一度じっくりと見つめてみよう。前作のアルバムやツアーで実践してきた「旅」のおおきな成果のひとつでしょう。こちらは新録ではなかったようですが、収録曲目の選定、そしてCDジャケットデザイン(写真)やライナーノートに自身の言葉でコメントをつけるという、表現者としての新たな一面を感じることができました。

 そして、1年後。まもなく新アルバムが発売になりますね。タイトルは『ココロノウタ』。収録曲はすでに発表になっているようですね。でも、この手に取るまでお楽しみにとっておきましょう。この新譜は「歌さがしの旅2008-2009」のライブ音源のCDも合わせて2枚組となっていますね。ファンにとっても嬉しいものですが、是非是非、ファン以外にも多くの方々に聴いていただきたいものになるといいですね。

 
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 さて、最近のアルバムは、

『歌さがし~リクエストカバーアルバム』
『あいのうた~セルフセレクションベスト』
『ココロノウタ』

 以前のアルバムタイトルに使われていた『風』という言葉の代わりに『うた』という言葉が入りました!もっとも表記は、漢字→ひらがな→カタカナ、となっていますが。心機一転、と上に書きましたが、そういったことがアルバムタイトルに反映しているのでしょうか?

 私は思うのです。ピカソに「青の時代」「バラの時代」「ゲルニカの時代」などがあったように、夏川りみさんにも「『風』の時代」という突っ走った時代があり、それにつづく「『うた』の時代」があるのでしょうか、と。私はそれに期待し、胸躍らせたい。作風を変えていく、ということではなく、その時代時代に応じた夏川さん自身の心境の変化、成長、大事にしたいもの、などが率直に現れてくるのだと思います。それをみてみたい、感じてみたい。

「『風』の時代」から「『うた』の時代」への過渡期に該当する時期に作られたアルバムが、『歌さがし~リクエストカバーアルバム』という位置付けなのだとしたら、『あいのうた』『ココロノウタ』につづく「うたシリーズ」の3作目が早くも気になります。3部作なら、さしずめ「完結編」といえるのでしょうか?なんのうたなのでしょうね。

 あい、ココロ、ときました。昨年から今年にかけての夏川さんの活動が「環境保護」などに傾いてきていることから、「地球」「自然」あるいは「命」などと、いろいろ想像をしてしまいます。

 しかしながら、「あい」や「ココロ」というニュアンスは、人間にとってある意味で特別なものです。「地球」や「自然」とは少し異にします。地球や自然が人間が存在しなくても存在するのに対し、「あい」「ココロ」は人間そのものです。人間にとって大切なものであることは共通していますが。

 これらの二つの概念は、異質ではありますが、繋ぐことができると思います。夏川さんの歌によって、それが見事に融合するのではないか、と期待しているのです。次のアルバムで!

 アルバムのタイトルは「ふるさとの歌」なんていかがでしょうか?ひとりひとりのココロにあるフルサト。時とともに失われつつある自然と重なり合う気もいたします。あ、でも「家族の唄」なんかもいいですね~。

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 今回は何だか評論家っぽく書いてしまいました。・・・えっ!?いつもそうじゃないかって?

 そうですね。でも夏川さんの歌やアルバムについて、じっくりと考えてみたかったのです。

フルサト エッセイ 2009


夏川りみさんと遊ぼう