「フルサト」by ハイフェッツ


第24章 ルパン三世~里美王国より愛をこめて


序章
 警察庁内で厳重な緘口令を強いたにもかかわらずルパン三世の登場は直ちに世間の知るところとなりました。リュパン三世からの刑事局長への犯行予告状を主要新聞のひとつであるA新聞が翌日の朝刊でスッパ抜いたからです。

 記事は、リュパン三世からの寄稿文の引用という形で記載されていました。予告文の写しのほか、深夜品川プリンスの一室に忍び込み予告状を置いてきた様子や刑事局長のロレックスの写真など、犯人にしか知りえない情報が記載されていおり、記事の最後にはリュパン三世の署名が明記されていました。

 警察はA新聞編集長から記事の入手ルートについて事情聴取したものの、有力な手がかりは全く得られませんでした。逆にその日の夕刊には、寺野刑事局長の件のロレックスが、彼の腹心の部下で刑事警察ナンバー2の安倍副局長の上着のポケットから発見されたことが報じられました。もちろんリュパンによる茶目っ気のある悪戯に他ならないのですが。

 世間はリュパンの数年ぶり久々の登場に驚き、これまで以上のスケールの大きい冒険を期待し、さらに警察がリュパンによって演じさせられる喜劇的な役割に狂喜乱舞しました。当然、連日連夜各種メディアが特集を組んで報じました。有識者といわれる人々による様々な議論が展開される中、ある疑問がすべての疑問を制してしまいました。

 リュパンは一体何を狙っているのか?
  りみ島に伝わる里美王国の秘宝とは何なのか?
 
  警察庁のリュパン三世対策本部では連日捜査会議が白熱しています。警察の頭脳を結集したこの会議体において、「里美王国の秘宝」についての報告がなされました。それは概ね以下の内容のものでした。

①「里美王国の秘宝」とは、りみ島に古来より伝わる伝統楽器である三線。銘は「里美姫」。
②この三線「里美姫」はすでに国宝に指定されており、現在はりみ島にある美里城跡博物館に厳重に収められている。
③三線「里美姫」は工芸的美術的価値が優れているというだけでなく、数々の伝承に残されている奇跡の楽器。代表的なものでは、江戸時代中期頃この楽器を当時の王朝の姫が演奏することで薩摩藩との和解が進んだという言い伝えなど。このことから地元では平和の象徴として伝えられていること。
④特別に選ばれた歌姫がこの楽器を用いて歌い演奏することで大変な宝物を生み出すという言い伝えもある。

「やつが何を狙っているのか、さっぱり読めませんなあ」
金形警部が頭を抱えます、「メリットが無い」。
寺野刑事局長は「この④の特別に選ばれた歌姫が宝物を生み出すというのがポイントといえばポイントではないのか」。
「それにしても荒唐無稽ですねぇ」
金形警部は納得いかない様子。

 会議が行き詰まり、取りあえず「美里城跡博物館」の警護を厳重にする手配を打つことを決定したとき、急遽、下記ニュースが会議体メンバーの元へ知らされました。
「緊急ニュース!!人気歌手夏川りみさんが白昼、都内の百貨店から出てきたところを、男三人組により誘拐された!夏川さんのマネージャーでこの日同行していたS氏が激しく抵抗したところを犯行グループの一人に鋭利な刃物で重傷を負わされ病院に運ばれたが重体。犯行グループは現場に警察に当てた声明文を残しワゴン車で連れ去った」というものでした。声明文の内容は以下。
「特別に選ばれた歌姫・夏川りみさんはお預かりします。寺野刑事局長さん、戦いを始めましょう!リュパン三世」

ルパン三世~里美王国より


夏川りみさんと遊ぼう