そして江の島のネコへ
雲取山でメモリーが見つけてもらえなかったので面白くなかったためか、1月5日に「新春パズル~延長戦~」と題されたメールが再度届く。「私が雲取山に埋めたものは拾われたか飛ばされた。オオカミ少年みたいに思われるのが不本意」 などと書かれており変なプライドも見て取れる。
3つの問題を解いていくとメモリーのありかが解る形式で、指定されたページの問題を解いていくと、江の島のネコの首にメモリーを付けたとの答えが書いてあり3枚の写真も掲載されていた。
答えを解いて江の島に出かけてネコを見つけたのは警察ではなく日本テレビの記者。すぐに警察に通報した日本テレビは当然ながら、その一部始終をカメラに収めていた。
犯人が出した最終問題の画像。
このピンクの首輪にメモリーが貼り付けられている様子が写っている。首輪は100円ショップのダイソーで売っているものの様に見える。
オリジナルの写真には文字は無く、この写真はNNNニュース映像からキャプチャしたもの。
犯人が出した最終問題の画像。このネコがウィルスのデータが入っていると思われるメモリーを付けた江の島のネコ。
ネコの首輪を外そうとする捜査員。ネコの扱いに不慣れな様で、画面上からは力任せに引っ張るばかりの様子が見える。指紋が取れないようにか、引っかかれないようにか手袋をしているために首輪のロックが上手く外せないようだ。
ピンクの首輪を外したところ。
USBメモリーと報道されていたが、江の島のネコにくくり付けられたのはマイクロSDカードだった。
メモリーの中身については今後調べていくらしいが、犯人までたどり着けるかどうか。
江の島に防犯カメラがあって、ネコに首輪を付ける現場でも写っていれば犯人逮捕につながる可能性はあるのだが。
ちなみに我が家のネコちゃんたちも同じダイソーの首輪の色違いを付けている。
その後2013年1月7日、TBSテレビによると犯人がネコを撮影した場所は江の島頂上にある江の島コッキング苑の前の広場。そして目の前には防犯カメラが設置してあり、しかも江の島には屋外だけで35台の防犯カメラが設置されているそうで、ネコに向かって首輪を付けたり写真を写したりしている犯人の姿が映っている可能性は大。防犯カメラ自体、前年の12月25日に設置されたばかりだそうで、タイミングが凄すぎる。
やっぱり写っていたらしい
そして、1月8日の毎日新聞夕刊によると4日にサムエルコッキング苑前の広場でネコを抱いたり撮影している男の姿が、やはり防犯カメラに写っていたと言う。
また、ネコの首に付いていたマイクロSDにはウィルスと見られるプログラムとテキストファイルが入っていて、テキストの内容は 「自分は以前事件に巻き込まれたせいで無実にもかかわらず人生の大幅な軌道修正をさせられた」 「メールアドレスはもう解約したので何も発信しない」 という趣旨の内容だったという。
風体などが明らかになったため他の34台の防犯カメラの4日の映像も解析中との事で、たどり着けなかった犯人像に犯人のほうから出てきてしまったので、解決も近そうだ。
目撃者がいた
1月11日のTBSテレビによると目撃者もいるそうで、ずんぐりむっくりの黒縁メガネの男性だという。
ついに逮捕される
2013年2月10日、都内江東区に住む30歳の男を威力業務妨害の容疑で逮捕の報道。やはり調子に乗りすぎて江の島のネコをダシにして遊んだりした報いだろうか?
テレビで見る容疑者は確かにメガネをかけ、ずんぐりしていて少し猫背気味だった。前科があるそうで横に大柄で猫背の容姿が容疑者特定に役立ったのではと思われる。
江の島にはバイクで来たらしく、当然寒い中、雲取山にもバイクで行ったのだろう。
その後の報道では容疑者はネコに執着しているらしく、ひんぱんにネコカフェに出入りして、カフェにはお気に入りのネコなどもいるそうで、世間のネコ好きには迷惑な話です。
江の島での防犯ビデオ映像からバイクで東京の自宅まで帰るまでの様子が確認されているそうで、ビデオ映像は犯罪捜査には決定的なツールといえそうだ。
それにしても江の島中に35台の防犯カメラが設置されているとなると、ネコを捨てに来るやからも、これからは減るかもしれない。
現在容疑者は全面否認しているため、誤認逮捕が続いた警察は今回は本当に大丈夫かなと心配もしてしまう。
真犯人は別にいる??
容疑者の弁護士が2月14日の夜に記者会見を行い、容疑者が 「真犯人は別にいる。自宅のパソコンなどから遠隔操作ウィルスの証拠が出るはずは無い。 」 と話していると明らかにした。
かたや、雲取山と江の島に行ったことは認めているというが、動かぬ証拠が出るかどうかは微妙なところ。
遠隔操作による脅迫容疑の無実の2人を自供させてしまったことで、警察による自供がどうも信用できない話になってしまった。
これは裁判になった時には意外と面倒な事件なのかもしれない。
2月15日の朝日新聞朝刊によると、調べに対して1月3日に江の島に行って猫の写真を何枚か撮った事は認めているものの、事件そのものへの関与は否定しているという。
同日の毎日新聞朝刊の方が詳しいが、江の島へ行った事は認めているものの、猫への首輪取り付けは否定しているという。弁護士によると、8年前の同様の前科に関しては 「自分が悪かったので警察、検察を恨むような感情はない。 」 と言っているという。
現在取調べ中断中
その後、容疑者が取り調べの状況をビデオで撮影するなど可視化されない限り、黙秘すると発言し、弁護士も同様の内容を警察に申し立てた。
江川紹子さんの佐藤博史弁護士へのインタビューが2月19日Yahooニュースで報道された。内容は警察に対する疑問点が多く、一つはウィルス自体はコンピュータープログラム言語の一つであるC#で書かれていたにもかかわらず、容疑者にはC#自体が書けないというもの。
佐藤弁護士の感触によると、上記の犯人が撮影した写真も、彼所有のスマートフォンやパソコンからは見つかっていない様だ。
決定的な証拠であったはずの、江の島防犯ビデオの映像も、佐藤弁護士が 「写っていないのではないか?」 と警察に疑問を向けると、仕事先のパソコンに海外の匿名サーバーに接続の痕跡がどうのこうのという、FBIが捜査しているというような話に報道がすり替わってきている。
2月25日の共同通信によると、このインタビュー記事が掲載された後、何と2月19日以降、一切の取調べをしていないのだという。
よほど内容がショックだったのだろうか。
弁護士によると 「警察が録画を拒否するのは、嫌疑の根拠が薄弱であることが露見する恐れがあるからだ」 と指摘した。
無実の2人に無理やり自供させてしまった事件だけに、録音・録画をする方が警察にとっては、今回は無理な取調べをしていない事への証明にもなるので、むしろ可視化した方が自然だと思うのだが、どうも話がおかしくなってきた。
私は犯人ではありません
2月27日、東京地裁で勾留理由開示の手続きが行われた。
NHK他各テレビ局のニュースで報道されたが、裁判官は勾留理由を「罪を犯したことを疑う理由がある。証拠の隠滅や逃亡のおそれがあり勾留する理由があると判断した」と説明。
本人は 「私は事件とは一切関係ありません 」 と改めて事件への関与を否定した。佐藤弁護士は「明日までに勾留を取り消さない場合、裁判所に勾留取り消しの申し立てを行う」と述べた。
風向きが変わってきたせいだろうか、内容は見ていないが電車の中吊りに踊る週刊現代の「冤罪だったら刑事も記者も全員クビ」の記事には驚いた。
この記事のせいでも無いのだろうが翌28日、今まであれほど詳しく記事にしてきた毎日新聞の朝刊上には一切、東京地裁で勾留理由開示関連の記事は見あたらなかった。朝日新聞の朝刊にも「私も誤認逮捕」主張、の短い記事が最終面に載ったのみ。
容疑者の勤務先の社長によると、容疑者がC#でウィルスのプログラムを書いたことは彼の力量からして難しいのではと証言しているらしいし、容疑者は江の島のネコに会うために、ひんぱんに江の島を訪れているらしい事から、年末年始の江の島にいた事は自然な事なのかも知れない。
容疑者は1月3日の午後に江の島にいた事は認めており防犯カメラにもそれらしき人物は写っているらしい。
もし、それ以前に首輪を付けたネコの写真や、それ以降の首輪を付けていないネコの写真でもあれば、容疑者の容疑は完全にはれる。
実は正月の江の島は大変な人出のため、ネコの写真が存在する可能性は高そうだ。
どちらにしても3月3日が拘留期限。
私はネコ好きの容疑者の無実を信じたい。
ハイジャック防止法違反容疑で再逮捕
威力業務妨害容疑での拘留期限である3月3日に、東京地検は容疑を処分保留としたが、警察は別の日航のホームページへの「航空機内に爆弾を持ち込んだ」 とのウィルス感染パソコンからの書き込ませた事件で、ハイジャック防止法違反容疑と威力業務妨害容疑で再逮捕した。
先行きは見えないのだが、容疑者は録画をしない限り取調べには応じないと言っているそうで、実際に取調べが出来るのだろうか。
3月4日の毎日新聞夕刊によると米国のデータ保管サービスには複数のウィルスが残っており、容疑者のパソコンで作成された事を示す痕跡もあったという。捜査関係者への取材によると、容疑者が会社で専用に使っていたパソコンからウィルス作成の痕跡が残っていたという。
一方容疑者は「会社のパソコンからウィルスを作った証拠など出るはずが無い」 と言っているという。
起訴される
東京地検は3月22日、容疑者をハイジャック防止法違反、偽計業務妨害、威力業務妨害の罪で起訴した。起訴状などによると日本航空への爆弾持込の書き込みと2回の大量殺人書き込みの3つの事件に対しての起訴である。本人否認のまま、証拠だけで起訴にふみきった。
3月23日の毎日新聞朝刊によると、押収した容疑者の勤務先のパソコンから遠隔操作ウイルスと類似するウイルスが見つかっており、試作段階で消し忘れたものと考えられているらしい。事件に使われた掲示板サイトに動作テストと見られる暗号化された複数の書き込みがあり、IPアドレスが勤務先やネットカフェであることもわかっているらしい。ネットカフェにその時間容疑者がいた事も確認されているという。
同じ日の朝日新聞によると弁護人の佐藤博史弁護士が会見で「明らかに無実の人を起訴したと断言できる。恐らく歴史的に大変な汚点だと思う」 と批判した。とある。
起訴された事で裁判での決着となり決着は数年後となる。
証拠を積み重ねると確かにストーリーは出来上がるが、あのような種類の物が本当に証拠となるのだろうか、とふと私は考えてしまった。
2013年6月28日の読売新聞によると、全面否認のまま捜査は終結し、結局被告は合計10事件、15の罪で起訴されることとなった。
内訳はハイジャック防止法違反1件、脅迫1件、業務妨害7件、ウイルス供用6件の計15。
そして2014年5月20日
保釈中の片山祐輔被告が第三者を装い「真犯人は片山では無く自分が犯人だ」 というメールを各所に送信したスマートフォンを河川敷に埋めているところを捜査員に目撃され、掘り出したところ片山被告のDNAと共に中に送信した内容のデータが残っていたところから、追い詰められて終に弁護士に自分が犯人であることを認めるに至った。冤罪を2件生み出した事件だけに、警察の本気度も違ったようだ。
ネコ好きの片山被告を信じたい気持ちもあったのだが、私も事ここに至ってギブアップ。
ご主人様を守るため悪い犬を追い払ったネコのためにも、罪を償って出直して欲しい。
2015年2月4日、東京地裁は片山被告に対して 「悪質なサイバー犯罪」 として懲役8年(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。片山被告は控訴をせず刑が確定した。