竹島旅情


愛知県の蒲郡がまごおりには知る人ぞ知る竹島がある。
ここには竹島弁天が祭られていて、島の姿も江の島を思わせ橋まで架かっている。春の大潮の干潮時には歩いて渡れるというのも見過ごせない。

江の島マニアック
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左が潮が満ちた状態の竹島。潮が引くと右の状態になります

蒲郡の駅前には観光協会があり地図を頂き、ボランティアガイドの存在を教えてもらう。
駅から歩く事12分、駐車場横にボランティアガイドの看板を見つけ案内をお願いする。

竹島は左右どちらから見てもまん丸の形の良い島だ。
周囲650m、海抜24m、面積5800坪は東京ドームの1.5倍。
半円形は東京ドームを思わせたりもする。
島には人為的に植えた植物は2本の竹を除いて1本も無く、自生の65科238種の暖地性植物が繁茂する島は国の天然記念物に指定されています。

昭和7年に竹島には総コンクリート製の橋がかけられましたが、昭和34年の伊勢湾台風で竹島側の橋脚が破壊され橋が落ちました。現在の橋は昭和61年に再建されたもので、手すりは潮風に強い軽合金製。全長は387m。

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様々な方向から竹島を眺める。どこから見てもあまり形が変わらないため竹島は真円に近い形だとわかります。


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どの方向から見ても半円の竹島は美しい。桟橋の正式名称は竹島橋。

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文学記念館の和室から眺めた竹島。大正、昭和の文人たちはこの姿に魅了され多くの作品を残しました。

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橋を渡っていくと大正4年に作られた鳥居が見えてきます。高さが低く感じるのは橋の位置が高いためです。



下は各種の竹島を描いた絵図。建て看板2種と配布地図2種。
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左より、蒲郡駅前パネル地図、八百富神社入口の地図、観光協会配布の蒲郡シーサイドマップ、八百富神社パンフレット掲載地図。



橋が架かっていない時代には船で竹島に渡っていたが、何とか永久橋をかけたいと、当時の蒲郡保勝会を中心に運動がすすめられていた。
昭和7年名古屋の繊維問屋、滝信四郎氏が自費で橋をかけ蒲郡町に寄付したのが竹島橋のきっかけとなった。

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竹島から常磐館を望む(大正、昭和初期)

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竹島橋が架かる前の竹島を望む。当時は船で渡っていた。

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大祭に架けたれていた竹島橋の仮橋(昭和7年以前)

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旧橋 竣工昭和7年4月 全長416.90m 幅員4.12m

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竹島の東、弘法山に立つ弘法大師像。高さは台座も含めて29.69mは東洋一。という事は世界一。宇宙一。
この5枚の貴重な写真は竹島ボランティアガイドの杉本様より送って頂いたものを掲載しています。


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埋め立地越しに見る竹島
昭和28年の13号台風、昭和34年の伊勢湾台風と続けて多大な被害を出した教訓から愛知県一帯は防波堤の工事が進み蒲郡も現在は防波堤で囲まれています。写真は以前の海岸線から見た竹島。前面の木々の植えられている部分は埋め立て地。

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埋め立て地には建物の建ち木も植えられています。防波堤の左側が以前からの陸地部分。右手は工事後、建物も建てられ植物も植えられた埋め立て部分。

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八百富神社の拝殿

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拝殿から竹島を望む

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八百富神社の案内板

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橋の埋め立てられた部分

埋め立てにより橋の長さは以前の403mから387mに短くなりました。写真手前ハニワ像の部分がかつての橋が架かっていた場所。遠くに人が立っている場所が現在の橋が始まる部分。

そして橋の手前にはかつて竹島八百富神社の拝殿として使用されていた社殿が残っており、拝殿越しに竹島を眺めてみると橋が無かった時代にも信仰を集めた竹島の姿が浮かびあがります。



桟橋を渡りきると竹島では大正4年に出来た鳥居が私たちを出迎えてくれる。鳥居越しに今来た方を眺めると山の上には蒲郡プリンスホテルも見える。ホテルは昭和9年開業の日本最古のホテルで蒲郡観光ホテルとして営業していた。
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竹島入口の鳥居。ガイドさんが手だけ出演。

1980年に一旦閉鎖の後、現在はプリンスホテルの経営となった。つつじ祭りには多くの人々でにぎわい、ホテルからは絶景の竹島が望める。
桟橋の両側にある電灯は以前の橋では橋の手すりに付けられていたが、新しい橋では橋の外側に設置されている。この分だけ橋の幅は狭まったそうだ。年末の落ちハゼシーズンには桟橋の上はハゼ狙いの人たちの釣竿で一杯になるという。

竹島は潮干狩り場ともして知られ春の干潮には潮干狩り客でにぎわいます。禁漁期には漁師さんしかアサリを獲ることが出来ません。
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竹島桟橋の上から撮影

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海岸を見ると「ここは貝塚か」と思わせるような膨大な量の貝殻が。

300余段の階段を登ると御手水場があり、やはり立派な龍がおられます。

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八百富神社の御手水場

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八百富神社本殿

これが八百富やおとみ神社の本殿で通称竹島弁天として親しまれて、江の島、厳島いつくしま竹生島ちくぶしまなどと共に日本7大弁天の1つに挙げられています。御祭神は市杵島姫命いちきしまひめのみことで縁結びと安産にご利益があります。



竹島という名の由来は藤原俊成としなり卿が三河守に在任中、琵琶湖の竹生島ちくぶしまから市杵島姫命いちきしまひめのみことを歓請せられた事に始まるとされています。竹島の名の由来としては他に、その際持ち込んだ島唯一の人口植栽と言われる2本のスホウチクの存在からという説。又、展望台に降りる途中左手にのみ生えるホテイチクに由来するという説があります。
ちなみに現在、琵琶湖の竹生島ではカワウが繁殖し糞害で木々が立ち枯れて大変な問題になっています。

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スホウチク。もう一本は手前に並んであります。

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元竹の札のかかったスホウチク

スホウチクは本殿の右手に2本植えられていて、枝には元竹の札がかけられています。この2本が竹島で唯一人為的に植えられた植物です。

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宇賀神社

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大黒神社

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千歳神社

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ホテイチク

これが展望台に降りる途中左手に生えているホテイチクです。このホテイチクは数メートルしか離れていない通路を隔てた反対側にも決して育たず、このわずかな場所でのみ生息する不思議さが竹島の由来の1つといわれています。
ホテイチクはクロチクと共に釣竿に最適な竹ですが、天然記念物の島ですので採取すると罰せられます。

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八大龍神社

境内には他に商売繁盛の神である宇迦之御魂神うがのみたまのかみを祭った宇賀神社。夫婦円満、家内安全の神である大黒主命を祭った大黒神社。藤原俊成卿を祭った長寿に御利益のある千歳神社。厄除けの神、豊玉彦命を祭った八大龍神社などがあります。


島は国の天然記念物ですので、勝手に樹木を切ったり植えたりは出来ません。ですから竹島では木々はとても大切に扱われています。

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カゴノキ(鹿児の木)

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マキノキ(細葉)

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ヤブツバキ

カゴノキは鹿児と書き鹿の子供の肌の様な模様で大変珍しい木です。中央のマキノキ(細葉)はこの様に巨大なものは大変珍しく温帯気候と人の手が入っていない事で育ったものです。巨大杉と共にご神木として本殿に向かって左手に生えています。
右のヤマツバキはお札授与所を建てる際、屋根にぶつかるため建物の屋根に穴を開けて建設したものです。

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三河大島と小島

八大龍神社をぬけると橋の反対側の展望台に出ます。当日は曇りで渥美半島は望めず手前の三河大島と左手の小島しかはっきりは見えませんでした。


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この岩は竹島を蒲郡側から眺めると右手にちょこんと飛び出して見える岩です。上部に常夜塔が設置されていますが、これは後に付けられたもので、この一帯は以前は島の一部でした。名古屋城を建設の際に石垣として削り出された残りです。

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アサリ船が出ていますが水深は膝下しかありません

これが、島の端から小さく飛び出ている写真です。当時は石を切り出す際、岩に小さな穴を空けて火薬を詰め爆発させて岩を切り出していました。

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岩を見ると爆薬充填用に空けられた穴が残っています。もっと近くに寄るとよく解ります。

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一直線に空けられた穴が良く解ります。

ここまで近寄ると直線状に空けられた穴がよく解ると思いますが、この穴に火薬を詰めて爆発させ岩を切り出していたわけです。
切り出した石は海路名古屋に運ばれ名古屋城の石垣に使われました。竹島が現在丸い形をしているのは名古屋城の建設と関係があったわけです。


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名古屋城の石垣の中で白い石は竹島から運ばれた石と言われています。名古屋城の周りを一周してみましたがあまりの大きさに息がきれました。尾張様に逆らう事などとても出来ません。ともかく大変なお城です。そうこうするうちに名古屋城のお堀で人面魚を発見。

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これが名古屋城のお堀にいた人面魚です。頭に小判も付けているので新種と思います
お堀端ではもう1つ面白いものに出会いました。

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自転車に3匹の犬を乗せてサイクリング中の男性を発見。名古屋では有名な人なのかも知れないが、前の籠にもう一匹が乗っています。写真が左に傾いて見えますが、木の立ち方を見ていただくと解るように傾いているのは自転車の方で右の犬のバランスをとっているわけです。後ろの犬も首を右に傾けてバランスをとっています。しかしよくおとなしく乗っているものだと感心しました。


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竹島側から眺めると山の上のプリンスホテルの真下に海辺の文学記念館があります。ここはかつて料亭常磐ときわ館があった場所で現在の建物は料亭では無く、蒲郡の歴史的建築物であった岡本医院の建物を再現したものです。明治末期開業の常磐館は昭和57年に廃業となりました。

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海に浮かぶ竹島全景

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春の大潮干潮時には水がなくなり歩いて竹島に渡れます

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蒲郡海岸風景竹島付近の賑わい(記念館所蔵の絵葉書)

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海辺の文学記念館入口にある常磐苑の表札

記念館の門柱には常磐館の名を残すため常磐苑の名が刻まれています。
常磐館の庭園は大変な立派なもので隣接して巨大なイケスがありイケスの淵を歩いて一周出来ました。

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記念館の和室から常磐苑の庭園越しに見た竹島の絶景

常磐館の庭園越しに眺める竹島は素晴らしいもので菊池寛、志賀直哉、川端康成等、多くの文学作品に登場します。
常磐館は季節になると海岸で獲れたアサリを文士の方々に届けたため記念館には多くのお礼状が残っています。

400余名の住民が暮らす江の島とちがい竹島には神社があるだけで住民は居らず夜間は無人島になります。竹島訪問の際は是非ボランティアガイドさんに案内して頂くと竹島や蒲郡の歴史がよくわかります。竹島入口のボランティアガイド待機所で申し込むと案内して頂けます。申し訳ない位親切にして頂き料金も無料です。山の上のプリンスホテルにも行きたかったのですが当日は曇りで霞がかかり遠くが見えないためあきらめました。

2004年3月25日