極近未来ジャーナル by Rei Kosugi


写真集『りみ』ラストショット


極近未来ジャーナル 12
「写真集『りみ』ラストショット」(後編)
                            (2007/07/17(Tue)15:56)

打ち上げはスタッフみんなで島の「かちゃーしー食堂」に向かった。が、店はすでにチャンプルー状態。従業員が店の前で踊って客が奥から泡盛を運んでくるという有様。

こ こではどうにもならんと酒と肴を貰って再び海浜公園へ戻る。 灯りがともり、三線笛太鼓を囲む大小いくつもの車座があちこちに出来、花見の公園のようなに ぎわいだった。 これを見た島長(しまおさ)、「こりゃほんまにてぃだが上がるまでティントンテンじゃ」と喜び、助役を呼んで「消防団、お巡り、病院、は 待機させといてね。 助役、あんたが指揮をとってな、わしも飲むさかい」と言い残しさっさと輪の中に入っていってしまう。・・・・

祭りのあと風を明るく照らす月がすこしづつ天空に上っていく。 ・ ・・・

りみ
「荒木さん・・・  先生 飲んでるか?」
荒木
(コップを上げて)「ああ  旨いなあ、ここの酒。今夜は特にうまい!」
りみ
「ねえねえ 今日で最後でしょ。美人に撮ってくれた?」
荒木
「さあな、撮れてんじゃない? 今日はヨースケが写してたから」

(I君に向き直るりみ) (ニコッと親指を立てるI君)
荒木
「りみちゃんはさ、ここで生まれて育って東京へ出たんだよね。
俺は生まれも育ちも東京だろ。 ずっとりみちゃんを見てきたら、俺、東京が好きだけど・・・
なんかあっちが小さく思えて来たさあ。」
りみ
「ん?」 (このところ荒木らしくなくなってきた荒木をまじまじと見るりみ)
荒木
「この、日本の西の端っこから光と風が起こってね、あんただけのことじゃないよ、この人たち見てたらりみちゃんが出てきたのが突然変異じゃないってよーくわかる。 あんたは西から上がった太陽か、それともここで生まれる台風か、いや太陽風かな?」
りみ
「あははは、面白いこと言うねえ先生。 私は好きな歌を歌えてぇ、私の歌聴いてくれる人がいればぁ どこだっていいの。どこでも行くさぁ」
荒木
「変わってきたなと思うよ。この半年位のりみちゃん。 歌さがしがきっかけかな? あんたもそう思ってるだろ? コンサートというより行き着く先はワークショップだよ、りみちゃんがやろうとしているのは。」
りみ
「そうかもね、やってたらいろいろ分かってきたよ。」
(彼女に構わず楽器を奏で歌い踊り楽しむ人たちを周りに見ながら)
「あ たしさぁ、日本中どこもみんなこんなんかと前は思ってたの。
どこでも人が集まるといろんな歌が出てくるって。でも今の日本じゃここが普通って訳じゃないのね。
こんな風に歌うことがないひとの方が多いんだって。なんかさ、う?ん うまく云えないんだけどカラオケだけがオアシスで外は沙漠みたいな。やっぱ さ、聴いてるだけじゃまだ心が渇いているのよ。みんなでワァ?? ってやると楽しいでしょ。
いい歌いっぱいあるじゃないよ。 ん? なに言ってんだ? あたし」

(りみと海とを交互に見やり、誰に言うでもなくつぶやく)
荒木
「ただいま?って帰ってきたけど、りみちゃん又、いってきま?すって行っちゃうんだろうなあ。東京なんて通過点の一つで」・・・・・
(返事が無いので、荒木が彼女を見ると、
歌手夏川りみは、その瞳ではるか沖を、海のかなたをじっと見つめていた。)


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夏川りみさんと遊ぼう