極近未来ジャーナル by Rei Kosugi


写真集『りみ』  -scene 5 撮影・天才の煩悶-


極近未来ジャーナル10
「写真集『りみ』  -scene 5 撮影・天才の煩悶-」
                            (2007/07/04 16:20)
出会い+半年
都内 荒木行きつけのバー 「ルージュ」
登場人物
写真家
荒木経惟
友人
M氏  (電通時代の同僚 りみファン)

設定
撮影は終盤に入り、この日荒木はTV番組の公開録画で歌うりみを撮った。
会場には友人のMが来ていて、 夜、久しぶりに「ルージュ」で飲もうということに・・

M氏
「ヨッ、お疲れさん カンパーイ!」
荒木
「オゥ」(二人 グラスを上げ ビールを飲み干す)
M氏
「ウーン!最高。 いやあ ノブさん相変わらずカメラ構えるとビシーッと気合が通って華麗に動くね。」
荒木
「よせやい、もういい歳だよ」
M氏
「いやいや、あの動き!ありゃアートだよアート。まるで曲の一部みたいだった。
みんなりみちゃんとノブさんと半分半分に見てたぞ」
荒木
「それよか、お前、いつからあの子のファンなんだ?」
M氏
「いや、ほんの最近でさ、初めは なんてきれいな歌声だろ。誰だ?くらいだったのよ。
正月に休業宣言しただろ、それで「ホー」てあの子の記事を読んだり、歌聴いたりしたのさ。
で、あの子のこと知れば知るほど、歌を聴けば聴くほどはまっていくのさ。わかるかなあ?」
荒木
「わかるよ」
M氏
「でも、いい年こいてハマッていく自分を信じていいと思ってるよ。ありゃ本物だ。」
荒木
「又、ファンの平均年齢上げやがって この野郎」
M氏
「又って…  そうか ノブさんもかい?」
荒木
「当たり前だろ、こんだけ近くであの子の歌、じかに聴いててハマらない奴がいるかって」
M氏
「うらやましいよなあ。  それで写真の方は撮れてるの?」
荒木
「あたボウよ、あんだけ光ってりゃ ビシバシ撮れるわさ」
M氏
「じゃあ、写真集が楽しみだな。 それにしちゃノブさんなんか浮かない顔してるね?
わかった、撮影が終わるとりみちゃんの生歌聴けなくなるからだろ?」
荒木
「バカ、違うんだよ、何かな、なんかはじめ思ってたのと違うのさ」
M氏
「・・・?」(荒木の顔をマジマシと見る)
荒木
「俺はね、光をね、あの子からの光を撮れればいいと思ってた。
撮れたと思うよ。それはね、でもな、それだけじゃないんだな、
あの子が歌いだすと光だけじゃない、もちろん耳にも体にもビンビン音、声は伝わってくる。
それだけじゃないんだな、」

(M氏 その先を促すような表情)
荒木
「・・・風 なんだろうな。 歌いはじめるとあの子から風が吹いてくる気がするんだ
でも、それはうまく写ってこないんだよ そんな気がするだけで 」
M氏
「風ね、 うん 俺もそんな気がするよ、 
あの人が歌いだすと浜風に吹かれているように気持ちがいいからな。
そうかい。天才にもいろんな悩みはあるんだねえ。
ノブさん、まあ飲もうじゃないか」
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その夜、写真家はある決断をした。


■極近未来ジャーナル by Rei Kosugi


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