極近未来ジャーナル by Rei Kosugi
写真集『りみ』 -scene 1 出会い-
極近未来ジャーナル6 (2007/05/22 07:47)
「写真集『りみ』 -scene 1 出会い-」
- 時
- 今日+xx日 朝 9時すぎ
- 所
- Rimi & Company オフィス
登場人物
- 歌手
- 夏川りみ
- 写真家
- 荒木経惟
設定
朝一番、オフィスに初老の男が訪ねてきた。
- 荒木
- 「ごめんください。私、荒木と申します。 夏川りみさんはおられますか?」
- Mさん
- 「あの、 りみさんはもう来る頃だと思います。
荒木さん… あの写真家の荒木経惟さんですよね。
あの、えっと どういったご用件でしょう?」 - 荒木
- 「私、夏川りみさんの写真を撮ってみたいと思いまして、
そのことで、直々にお会いしたいと思って来ました」 - Mさん
- 「はあ… あの、荒木さんの名前は存じております。
ただ、写真といってもりみさんは あの… その… 」
(その時 ドアが開いて)
- りみ
- 「おっはよー」
- Mさん
- 「あ、りみさん、こちら写し…」
(写真家と歌手は出会った瞬間まっすぐにお互いの目に見入った。 静かな数秒が流れる。)
- 荒木
- (ウンと深く頷きながら)
「私は荒木ノブヨシと申します。写真家です。あなたの写真を撮ってみたいと思って今日は来ました。
りみさん 私にあなたの写真を取らせてください」 - りみ
- 「はぁ? 写真? ですか・・ けど」
・・・・・・・
(言葉を探しながら)
「あの、一つお聞きしていいですか?
どうして私なんですか? なんで私を撮りたいと?」 - 荒木
- 「絵です。 あなたを描いた絵を見たから?」
- りみ
- 「え?」
- 荒木
- 「音楽や歌のことは私分りませんが、あなたの歌声を聴いてすごくいいなあと思いました。 たまたまテレビで見たあなたの表情がとても豊かで、それもいいなあと。そしてあなたの写真もいくつか見ましたが・・・まあ私には・・・。
カメラマンか写真家か知らないがこう言っちゃなんだが誰もあなたの光を撮れてないと思いましたよ。
ところがですよ。 ところが昨日。ファンの人が書いたスケッチを私見てしまったんだ。インターネットで。 ショックだったね。 この人たちには見えてるんだ。まるで負けてるじゃねーか。って思ったですよ。
私があなたの光を撮りたいと思った。そう思ったら矢も立てもたまらずにこうやって来ちゃったんです。
で今、思っていた以上にすごいことが分りました。」
- りみ
- 「ん?何がでしょう?」
- 荒木
- 「あなたの光です。アウラという人もいるけど。私ならそれが撮れる。」
(又、じっと相手の目を見る二人のアーティスト)
・・・・・・・
- りみ
- 「分りました。 撮ってください。」
(ずっと固まっていたMさんがビクッと動き「えっ?」と声を上げる)
- 荒木
- 「そうですか、有難うございます。しかし会ってみるものだな。あの絵は凄い」
- りみ
- 「きっと吉野やさんのスケッチのことですね」
・・・・・・フッと物想いする二人。
(唐突に)
- 荒木
- 「突然押しかけてすみません。これで失礼します。 又、改めて話しに来ますので。」
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(挨拶をしてフィッと風のようにオフィスを出て行く小柄な写真家を見送りながら)
- りみ
- 「あ~あ、私がチョウダイ攻撃されちゃったなあ」
- Mさん
- 「りみさん、初対面の人なのにどうしちゃったんですか?」
- りみ
- 「ああ。そうね。なんか、今ここへ入った途端ね、チュ-エイさんがいるのかと思ったの。
感じなかった?おんなじ空気?」 - Mさん
- 「私、今なんかとても不思議な瞬間に立ち会ったような気がしてます。」
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たしかにそれは稀代の歌手に注ぐ奇跡がまた一つ巡りはじめた瞬間だったのである。
(続く)