「フルサト」by ハイフェッツ
第44章 翼をください~勇気ひとつを友にして③
(2007年7月1日)
戯曲原案
題名「琉球の海と空と太陽と~ある若者の儚き想い」
第一幕・第二幕・第三幕(フィナーレ)の三部構成
第一幕
天海手(あまてぃ)と、その娘である里美手(りみてぃ)は腕ききの三線職人でした。中国大陸から伝わった楽器を琉球独自に発展させた三線の歴史の中でも、そのきらびやかなデザインと豊かな音色において頂点を極めた時代の最高の職人でした。
【涙そうそう・夏川りみさん歌唱】
ある日、里美手を王妃が呼び出しました。
「里美手や、私はお前のことが気に入った。私のために、この世でたった一つしか存在しない三線をつくってくれまいか。どの三線よりも美しく輝く音色を持ち、どの三線よりも見た目が美しいものを。つまり私に最もよく釣り合う三線をつくってくれまいか。」
里美手は、この光栄な仕事に驚き舞い上がり、答えました。
「精魂こめて作らせていただきます。きっとその出来栄えに驚かれることでしょう!」
工房へ帰り、早速仕事に取り掛かりました。最高の材料を最高の技術で、最高のアイデアで作りこむ。職人冥利に尽きるとはこのことでしょうか。
天海手と里美手。二人の天才によってついに完成しました。見事な出来栄えの新しい三線を王妃に献上しました。王妃は大喜びし二人に充分な報酬を与えました。
最後に王妃はこう述べました。
「唯一無二の三線だ。これと同じものを決して作ったりしないように」
里美手には恋人がいました。三線を弾かせたら西国一。歌を歌わせたら恐らく右に出るものはいないという、唄者の若者。ふらり立ち寄った里美手の工房を訪れたとき、ひと目で恋に落ちました。以降、愛情を深め合い、将来を誓い合う仲でした。
【月の夜・夏川りみさん歌唱】
里美手がある時一生懸命に三線を製作しているのを天海手が見咎めました。
「おい、里美手!それは王妃様に献上した三線ではないか?同じものを作ってはいけないといわれているのに、何故作っている?」
「いいのよ、わかりはしないわ」
「まさか、お前・・・」
「そうよ!彼に贈るのよ。どんなに素晴らしい三線でも名人が使わなければ価値が無いのよ」
かくして「もうひとつの三線」は恋人の唄者の手に渡されました。
【ファレムウタ・夏川りみさんの三線弾き語り】
唄者はその「もうひとつの三線」の魅力に勝てずに、とうとう人前でそれを披露してしまいました。とても評判になりました。しかし天海手の心配どおり、このことが王妃の逆鱗に触れ、若い唄者は捕らえられ即日打ち首に。悲しみと後悔に取り乱す里美手と、心配そうに娘をなだめる天海手。
二人は王国の役人たちに捕らえられ、りみ本島の迷宮美里城の隔離塔へ幽閉されました。入口も出口も無い、窓がひとつだけある高い塔の天辺に幽閉されたのでした。
【夕映えにゆれて・夏川りみさん歌唱】