「フルサト」by ハイフェッツ
第21章 沖永良部島を旅して④
(2007年4月26日)
沖永良部空港に到着しました。レンタカーを返して搭乗手続きに入ります。早朝から仕事をしてお昼過ぎまでノンストップで作業しましたので少し疲れました。何しろ大変に暑いので。タオルで顔の汗をぬぐいながら、てぃだを見上げます。暑いけれど、あったかい。変な表現ですが実感です。
さて、晴れ渡る日も雨の日も浮かぶ笑顔の持ち主なのかどうかは分かりませんが、来た時と同じキャビンさんがゲートでニコニコ顔で待ち受けます。ハンディタイプの金属探知機を使い搭乗者をチェックしていきます。私の番になると、何と、ピピピピピピピーと!
心当たりは全くありません。Tシャツにジーパンという普通のカジュアルなスタイルなのですが・・・。Wさんはこのアクシデントにニヤニヤしています。
キャビンさんは何度か試してくれますが、不思議とアラームは鳴りつづけます。どうやら私のお腹周辺で反応するようです。
私は少し太り気味ゆえに、お腹はぽっこり膨らんでいます。Tシャツの上からもその様子がよく分かります。しかも前日の晩にサーターアンダギーを食べ過ぎたためか、膨らみはさらに増しています。Tシャツの下に何か怪しいものを隠していると見られても仕方ないかもしれません。
この時点でWさんは大笑いです。キャビンさんもちょっとツボにはまった模様。
「ではこれでどうですか?」
私はTシャツを捲り上げ自慢のまあるいお腹を丸出しにして提示しました。これを見て、ついにキャビンさん爆笑!「うふふふ!ハハハハ!!」
しかもこのキャビンさん、信じられない行動に出ました。金属探知機を私のまあるいお腹にあてがったのです。それでもアラームは鳴りつづけます!!周囲も私も大爆笑の中、私は「はっ!」と気づきました。
そうだったのですか、と!
キャビンさんのあの笑い声!
そして昨日来このキャビンさんに感じていた親しみや懐かしさの正体が!
「声」だったのです。キャビンさんの声は夏川りみの声とそっくりです。声をあげて笑ったときの笑い声が、夏川さんのステージでの笑い声と同じです。MCの時の声も全く同じです。声に惚れてCDなどを聴いていると自称しているにもかかわらず、気づくのが遅く情けない限りです。一生の不覚と言ってよいでしょう。そう思って聴いてみると、キャビンさん自体が夏川さん本人のようにも思えてきたりしました。
あれから二年近く経ちます。沖永良部島に関していろいろ考えたこと考えさせられたことはしっかりと自分の中に刻まれています。沖永良部を征服した薩摩藩や琉球王朝よりも遥かに大きなヤマト=日本に戻ってきましたが、大国の住人だという驕りを無意識の内に振りまいている多くの日本人に出会いました。私はそうありたくはないのだと心がける他はありませんが。
また仕事上の必要から沖永良部を訪れることがあるかもしれません。いや、仕事抜きで旅行したいと思います。
残念ながら、あの時伺っていたキャビンさんのお名前を失念しました。彼女とカラオケに行きたい。夏川りみとそっくりの声をお持ちなら、その声で「涙そうそう」「童神」なんかを聴いてみたい。
でも、実はちょっとはデートしたい気持ちもあるかな・・。
「会いたくて 会いたくて 君への想い 涙そうそう」なんてね。
(沖永良部島を旅して~終わり)