「フルサト」by ハイフェッツ
第15章 水戸黄門漫遊記~りみ本島編
(2007年4月8日)
大団円
不思議な音楽と歌声は続きます。それは「黄金でその目を汚さないで 黄金の花はいつか散る」と諭すように歌い上げられます。
薩摩藩士も筆頭国家老の家来たちも戦いをやめて、その歌に聞き入っています。その歌の正体を見極めようとするように。
不意に琉球王国王女里美姫が里美姫はモルフォチョウの羽にも似た不思議な光を放つ青い衣装で姿を現しました。歌の声の主は里美姫でした。琉球の楽器「蛇皮線」を奏でながら一言一言語るように歌い継ぎます。ふと傍らに目をやると、薩摩藩主島津忠英公の御姿も見えます。忠英公は琵琶のようでもあり蛇皮線にも似た西洋風の楽器を操っています。二人の織りなす音楽はその場にいたものたちの心を変化させる『風』を放っていました。
もはや誰も争うことはしません。佐野真之介以下薩摩藩主らは頭を床にこすり付けなきながら聴いています。里美姫が平和の『風』を送り、忠英公がその平和の『風』を操るかのようなコンビネーション。もはや解決です。悪徳国家老に裁きが下ったのです。
モルフォチョウの里美姫は「黄金で心を捨てないで 本当の花を咲かせてね」と、歌います。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
薩摩藩のお家騒動を解決し琉球王国を開放した光圀一行は、里美姫の招きに応じて、ここ「りみ本島」を訪れています。琉球料理に、琉球音楽に、琉球漫才に新鮮な感動を覚えながら、心地よいつかの間の休息を楽しんでいます。佐野真之介夫妻も、おはるも八兵衛も弥七も、心からリラックスしている様子。
里美姫の屈託の無い笑顔の中に少し大人びた凛々しさも素敵です。ここ「りみ本島」は何か人の心を和ませることのできる特別の力を持った場所なのかなと光圀は思ったりもします。あのとき里美姫と忠英公の奏でた音楽は、初めて体験する音楽でした。まるで宇宙から来たような、宇宙人にあったような体験。いや、ひょっとすると三百年ほど未来からやってきた音楽なのかな。
元禄以降、幕末まで薩摩による琉球支配は続き、明治維新後の廃藩置県制度により琉球王朝は完全に消滅します。その間、薩摩と琉球の民間レベルでの交流がすすみつつも、琉球の文化がある程度はほぼ完全な形で残された背景に、薩摩藩主忠英公と里美姫に加え水戸光圀の今回の活躍があったことを歴史は教えてくれません。
りみ姫の
心地よい風
歌に乗せ
守りたるもの
琉球の明日
(水戸黄門漫遊記~りみ本島編 終わり)