「フルサト」by ハイフェッツ
第13章 水戸黄門漫遊記~りみ本島編
(2007年4月5日)
中編
里美姫を迎え入れた笹岡真之介邸は春の日が差したように明るくなりました。遥か江戸にまでその噂が伝えられていた類まれなる美貌は現実のものでした。大きなやさしい目をした愛くるしい整ったお顔立ち。ただし琉球から危険をかいくぐり苦労の末、やっとの思いで佐野邸にたどり着いたのでしょう。表情にやや疲労が感じられます。それとも琉球王国民の行く末を案じて心を痛めているのでしょうか。
「琉球王国国王の王女、夏川里美にございます。この度は遠方より琉球王国国民のためにおこしいただきましたこと、ありがたき幸せにございます。」と、里美姫はご老公にうやうやしくやや緊張気味に、しかし美しい声で挨拶します。
「いえいえ、島津藩による侵略という過去に悲しい経緯がありました。現在、幕府では琉球王国とヤマトは友好関係にあるべき隣国と考えています。清国、薩摩、大和、琉球はお互いを尊敬・尊重し合える間柄になれるよう、老体に鞭打って努めますよ。将軍綱吉殿も良好な関係の構築を切望しています。」
光圀はやさしくも力強く答えます。里美姫からの親書を薩摩藩主島津忠英公に必ず手渡すことと、悪の根源である筆頭国家老・琉球代官の追放を約束しました。そして、
「里美姫どのに代表される琉球民はみな心がきれいな人ばかりだと聞きます。その人たちを悲しませることは出来ません。ともに協力して琉球民を守りましょう」
里美姫はほっと安堵し笑みがこぼしました。これ以上ない魅力的で愛らしい笑顔でした。
翌朝、笹岡邸の台所から若い女性3人の声が明るく響いています。
「里美姫さまぁ~。こげちゃいますぅ~。」
「大丈夫さー。でーじー上手さー。」
「本当!おいしい!」
「あっ、つまみ食い~!」
里美姫、真之介の妻お伸、おはるの3人が朝から琉球伝統料理であるサーターアンダギーを作っています。光圀はその様子を微笑ましい思いで眺めています。「本当に三美神のようじゃ」
作戦も準備万端、整いつつある。
不意に赤い風車が光圀の目の前に!「ついに動いたか!」
里美姫をおはるとお伸に任せて安全な場所に逃がし、光圀と助さん格さん八兵衛そして真之介は邸で待ちます。程なく、国家老の手下役人が大勢で参上。
「謀反の罪で逮捕する!連行しろ!」
ほぼ無抵抗のまま紐でくくられ5人は牢屋に投獄されました。
果たして光圀一行はどうなるのか?里美姫は無事に逃げ切ることが出来たのでしょうか?次章こうご期待。