「フルサト」by ハイフェッツ
第14章 水戸黄門漫遊記~りみ本島編
(2007年4月7日)
後編
牢屋に幽閉された光圀たちに対し、筆頭国家老が直々に尋問します。
「笹岡真之介!薩摩藩士でありながら藩に楯突くとは不届きなやつだ。謀反を企てた罪で打ち首にしてくれる!おっと、打ち首の前に里美姫の居場所を吐いてもらおう。」
「殿に隠れて私腹を肥やしていることは明白、必ずや証拠を掴んで見せるぞ!御家老こそ切腹して責任を負うべきでしょう!里美姫の居所など存じませんね。」
真之介も全く譲りません。
しかしこれでは尋問とは名ばかり、一方的な言いがかりもいいところです。
「里美姫に動きまわられるとうるさい。消えてもらわねばならない」
「なんとひどいことを!」
「ふん!」そして国家老は光圀に対し、
「正体は分かっている。水戸の光圀公ですね。飛んで火にいる夏の虫ですな。生きては帰れませんぞ!」
「果たしてそうですかな?ふぉっふぉっふぉっふぉ!」
「ふん!笑っておられるのも今のうちだけだ!」
自室に戻った国家老は、ふと傍にいた見慣れない腰元に気がつきました。
「おい、新入りか?」
「はい。本日よりご奉公に上がることとなりました。おはると申します。」
「そうか。・・・ん?その大皿に盛ってあるものは何じゃ?」
「これは琉球王国より貢物として届けられましたサーターアンダギーでございます。」
大皿の上に山盛りになってこぼれ落ちそうになっています。しかも通常のものとは違い、一つ一つが大きく、直径6寸ほどでしょうか?大好物なので国家老は大喜びで貪り食いながら尋ねます。
「どうしてこんなに大きいのか?ムシャムシャ・・」
「それはお祝いなどの特別の時に食すものだそうでございます。」
「ほう・・そうか・・・そう・・・か・・・・」
半分ほど食べたところでご家老はこっくりと眠りに落ちました。眠り薬の効き目はズバリでしたね。おはるは、部屋の奥からすぐさま、裏帳簿と不当労働課税の証拠を見つけ出し、持ち去ることに成功しました。「楽勝ね!」
牢屋の光圀たちの下へまたもや赤い風車が!
「よし!参りましょう!」
真之介が指笛で合図を送ります。程なく仲間の藩士たち十名ほどが牢屋の前に駆けつけました。いずれも国家老の狼藉を許すことのできない正義漢たちなのです。
「笹岡殿、よくぞ頑張られましたな!」
「里美姫様はご無事に安全な場所に御連れ申しておりまする!ご安心をなされ。」
「城内の藩士たちも立ち上がりました。」
真之介は「ありがとう!みんな!」と涙しました。
「こちらは水戸のご老公様です。この度、我が藩と琉球王国のためにお力をいただきました」と紹介します。
「ありがとうございますー!」皆、ひれ伏しました。そして牢屋を脱出し皆で、極悪筆頭国家老のもとへ向かいました。
おはる及び笹岡真之介ら藩士たちが不正の証拠を国家老に突きつけました。そして辞任を要求します。国家老は不正発覚と秘密漏洩、部下の寝返りにより怒り心頭でした。
「こしゃくな真似をしおってー!!こやつら謀反者たちを処刑だーっ!ご老公も生きて返すなー!」
光圀一行と藩士たちに襲い掛かります。助さん格さんに弥七やおはるに加え真之介ら藩士も加わり乱闘になります。
しかし多勢に無勢。徐々に押されて劣勢になります。光圀危機!というまさにその時、何所からか美しい調べが聞こえてきたのでした。
独特のリズムと天使の歌声による、それはそれは皆の心が揺さぶられる音楽なのでした。