プレゼンテーションそのⅩⅩⅣ(24回)現代の作品


1994年1月27日(木)
東京文化会館小ホール
主催:音楽文化協議会







プ ロ グ ラ ム
1.塚谷晃弘・「オーボエ・ソロのための二章」 1.古典的な唄  2.巷の唄
オーボエ・原田知篤
2.伊藤隆太・「Duetto No.6 per Shakuhachi e 17Gen alla Nasuno」
尺八・川村泰山
十七弦・菊地悌子
3.藤田耕平・ピアノのための「庭」
ピアノ・中野洋子
4.寺内園生・[IMAGE」
フルート・渡瀬英彦
オーボエ・三原隆正
クラリネット・山根公男
ホルン・祝峰光彦、根岸伊智郎
バーカッション・中村祐子
ヴァイオリンⅠ・植村 薫、小野久美子
ヴァイオリンⅡ・高瀬美保、石井優子
ヴィオラ・諸岡涼子、豊田ゆかり
チェロ・中沢央子
コントラバス・小室昌広
5.山岸磨夫・「弦楽四重奏曲 -Ⅲ-“生けるものの詩”」
ヴァイオリンⅠ・工藤由紀子
ヴァイオリンⅡ・吉武美住
ヴィオラ・神田幸彦
チェロ・斉藤章一

曲目解説  田村 進(東京音楽大学教授)
1.塚谷晃弘・「オーボエ・ソロのための二章」 1.古典的な唄 2.巷の唄

 塚谷は1919年東京に生まれ、1942年東京大学を卒業した。在学中から諸井三郎について作曲を学ぶ。戦後1949年に「新作曲派協会」に参加、それ以来現在まで室内楽を中心に多くの作品を書いている。またその他の作品が1959年と61年に芸術祭奨励賞(団体及個人)を受けている。主要作品には「弦楽と打楽器のための組曲」、「ヴァイオリン・ソロのためのファンタジア」、「コントラバスのための三章」(1981年8月)のほか能に基づく室内オペラなどがある。日本の伝統を生かした彼の現代的表現は海外からも注目され、2、3の作品がしばしば演奏されている。

 この曲について作曲者は次のように述べている。
 『1)は日本の“古典古代”を幻想した。2)は現代の街の雑多な音響を整理しつつ、はみだしたりする雑多な唄。』
2.伊藤隆太・「Duetto No.6 per Shakuhachi e 17Gen alla Nasuno」

 伊藤は1922年、広島県呉市に生れた。東京大学医学部を卒業し、かたわら作曲を池内友次郎、諸井三郎、高田三郎に学んだ。第19回日本音楽コンクール管弦楽作曲部門で第1位ののち、事曲の分析から邦楽器の作品も書き、芸術祭、米国現代コンクールなど計12の賞を受けた。プレゼンテーションにも第18回以後、意欲的な作品を発表している。

 今回の曲について作曲者は次のようにのべている。
 『山田検校の筝曲「那須野」に発想の基盤を置き、楽財は天竺・唐土・飛鳥・読経・声明を含み、楽式も新しく工夫した。原曲は中田博之師に教えていただいた。物語は謡曲「殺生石」。天竺(印度)唐土(中国)の王朝で悪事を働いた「金毛九尾の狐が、鳥羽天皇の侍女「玉藻の前」となった。詩歌管弦の御遊のとき、激しい風で灯が消えると光を放ち、天皇は病気になられた。安倍泰成の調伏で正体を現わし、空を飛んで那須野に至ったが、上総介に射止められて殺生右となり、近づく生物を殺すようになった。玄翁和尚が杖で右を叩くと割れて霊が現れるが読経で回心する。
 曲は荒涼とした那須野に始まって、天竺・唐土・京を経て那須野で執心する、割れた右から出た霊は修法で解脱に至る。』
3.藤田耕平・ピアノのための「庭」

 藤田は1945年横浜で生まれ、1970年東京芸術大学作曲科を卒業した。作曲は池内友次郎と諸井誠に学んだ。主要作品には、2台のピアノのための「八百屋お七の舞台への音楽」、七奏者のための「黙示」、管弦楽のための
「屋の刻」などがある。
 彼は音の積重ねや淡々と流れる旋律のひびきの中に微妙な音色の変化を追求し、個性的な作品を書いている。
ソプラノとピアノのための「白鳥」は1979年のヴィオッティ国際音楽コンクール作曲部門で1、2位なしの3位に入賞している。「黙示」は1985年2月サンフランシス
コでの現代音楽週間で演奏されると共に、NHK・FMより放送された。

 作曲者は今回の曲について、次のように述べている。
 『勤務先の近くに小さな庭園風の公園があり、横浜には珍しく鳥たちの声が聞かれます。横手に公園を見ながら通りすぎる時、木々のたたずまいがさまざまに表情を変え、それまで静的だった庭のイメージがいっきょに動的なものへと変っていくのが感じられます。
 今回の作品では、この「移りかわり」の感覚を主要なモティーフとして、単一楽章のピアノ作品にしました。』
4.寺内園生・「IMAGE」

 ピアノを中野洋子と伊達純に、作曲と和声を寺内昭、川井学に学ぶ。
 寺内は1959年千葉に生まれ、高校卒業後渡独し、マリアフンク女史に作曲法を学んだ。代表作には、既出版のピアノ曲集「氷の城・イリュージョン」「めざめ・静かな風」「斑鳩」のはか、子供の為のピアノ小曲集として、「メルヘンの国」「小さな夢」「遊園地・宇宙船」(音楽之友社)「動物の大行進」(音楽の友社・CDフォンテック)「ピアノでひこうグリムのお話」「同・イソップのお話」「同・アンデルセンのお話」(東京音楽社)「マザーグース」(全音・CDフォンテック)などデリケートな感覚と想像力豊かな抒情的作品がある。
 日本作曲家協議会会員及び音楽文化協議会会員。

 作曲者はこの曲について次のようにのべている。
 『私が この曲に込めたく思いましたのは、人間の心の情景、とりわけ 躍動と孤独、宿命的なものに向かう決意といったことです。』
5.山岸磨夫・「弦楽四重奏曲 一Ⅲ-“生けるものの詩”」

 山岸は1933年東京で生まれ、1957年東京芸術大学作曲科を卒業した。作曲は下総皖一に学んだ。1961年の「シンフォニア」と1962年の「カプリチォとパッサカリア」は毎日コンクールの管弦楽部門で入賞している。「主要作品には交声曲「夕鶴」、「ヴァイオリンとピアノのための2つの詠」、「フルートとギターのための気と律」(昭和50年度武井賞受賞)、「弦楽四重奏曲Ⅰ」、「Ⅱ」、「ピアノトリオのための“乱”」、「ヴィオラとピアノのための変容Ⅰ」、「変容Ⅱ」のはか、合唱曲「白鳥帰行」、オペラ「温羅の砦」、「美作民謡による交響曲」、「交響曲美作Ⅱ」「管弦楽のための変容」、「二台のピアノとオーケストラのための協奏曲」などを書き上演されている。
彼は日本の題材にイメージを求め、平易で伝統的な手法を用いながら現代的でユニークな味をもつ作品を書いているが「フルートとギターのための気と律」はハンガリーにおいて演奏されるなど盛んな創作活動を行っている。
現在、作陽音楽大学教授。

 彼はこの曲について、次のようにのべている。
 『カオスのなかで、声にならない声がきけたならば・・・・・というイメージを考えました。』

田村 一郎