プレゼンテーションそのⅩⅩⅢ(23回)現代の作品


1993年1月26日(火)
東京文化会館小ホール
主催:音楽文化協議会
後援:在日チェコ共和国大使館







プ ロ グ ラ ム
1.アティラ・ボサイ・「弦楽三重奏曲」
ヴァイオリン・工藤由紀子
ヴィオラ・金子なお
チェロ・江原 望
2.山岸磨夫・「龍笛ソロのための ――」
龍笛・宕亀裕子
3.伊藤隆太・「Duetto No.5 per Shakuhachi e 17Gen alla Sumiyoshi」
尺八・三橋貴風
十七弦・菊地悌子
4.寺内園生・「Passion」
ヴァイオリン・植村 薫
ピアノ・菅 美穂
5.藤田耕平・「白 鳥」
ピアノ・中野洋子
6.塚谷晃弘・「ギターとコントラバスのための音曲」
ギター・芳志戸幹雄
コントラバス・永島義男

曲目解説  田村 進(東京音楽大学教授)
1.アティラ・ポザイ・「弦楽三重奏曲」作品3

 ボザイAttila Bozayは1939年生まれのハンガリーの作曲家。ブダペスト音楽院でファルカスに作曲を学んだ。彼はバルトークやコダーイの亜流に堕さず、セリエルの手法など現代的手法をとり入れながら個性的な音楽を書いて注目を浴び、1964年頃から彼の作品は世界各国で演奏されるようになった。当協会のメンバーとも親しく、準会員扱いとなっている。1974年第Ⅵのコンサートで、彼の「オーボエとピアノのための2章」が日本初潰された。

 この曲は、1969年ハンガリーで出版された初期の作品。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのために書かれ、全部で4つの楽章に分かれているが、各楽章の演奏時間は厳密に規定されている。又楽章間はアッタッカ、つまりほとんど休みなくつづけて演奏される。
コン・モト、デクラマンド、ルパート (2分)
アンダンテ・トランクイロ (2分15秒)
スービト・アレグロ・コン・ブリオ (2分10秒)
モッソ、アジタート・ルパート (3分)

2.山岸磨夫・「龍笛ソロのための一-」

 山岸は1933年東京で生まれ、1957年東京芸術大学作曲科を卒業した。作曲は下総皖一に学んだ。1961年の「シンフォニア」と1962年の「カプリチォとパッサカリア」は毎日コンクールの管弦楽部門で入賞している。「主要作品には交声曲「夕鶴」、「ヴァイオリンとピアノのための2つの詠」、「フルートとギターのための気と律」(昭和50年度武井賞受賞)、「弦楽四重奏曲I」、「Ⅱ」、「ピアノトリオのための“乱”」、「ヴィオラとピアノのための変容I」、「変容Ⅱ」のはか、合唱曲「白鳥帰行」、オペラ「温羅の砦」、「美作民謡による交響曲」、「交響曲美作Ⅱ」「管弦楽のための変容」、「管弦楽のための-序、破、急-」などを書き上演されている。彼は日本の題材にイメージを求め、平易で伝統的な手法を用いながら現代的でユニークな味をもっ作品を書いているが「フルートとギターのための気と律」はハンガリーにおいて演奏されるなど盛んな創作活動を行っている。現在、作陽音楽大学教授。彼はこの曲について、次のようにのべている。

『686年10月、天武帝の皇子、大津皇子は、謀反ありとして刑死させられた。飛鳥時代の、この悲劇の証として、大津の墓が、今も奈良県二上山山頂にある。この曲は、皇子の漢詩、「―深く  絃と共にを聞かしむ-」をイメージとした。』
3.伊藤隆太・「Duetto No.5 per Shakuhachi e 17Gen alla Sumiyoshi」

 伊藤は1922年、広島県呉市に生れた。東京大学医学部を卒業し、かたわら作曲を池内友次郎、諸井三郎、高田三郎に学んだ。第19回目本音楽コンクール管弦楽作曲部門で第1位ののち、筝曲の分析から邦楽器の作品も書き、芸術祭、米国現代コンクールなど計12の賞を受けた。プレゼンテーションにも第18回以後、意欲的な作品を発表している。今回の曲について作曲者は次のようにのべている。

 『原典の住吉神社をめぐる物語は平安時代に成立した。大阪にある神社ではなく、阪神問にあって歌道の神を祀る。須磨に流された源氏が京から来た<明石の上>と、そこで会い、神事を奉納して宴に移る。新羅系の僧が始めた田植祭(踊りは<かっぽれ>の源流という)がここで行われた。室町期に狂言謡にも取りあげられた。江戸時代に山田検校が<道行物>的に作曲した。40年近く前、山田流の中田博之・高橋栄清師に教わった。素材と楽式を拡大した。』
4.寺内園生・「Passion」

 ピアノを中野洋子と伊達純に、作曲と和声を寺内昭、川井学に学ぶ。
 寺内は1959年千葉に生まれ、高校卒業後渡独し、マリアフンク女史に作曲法を学んだ。代表作には、既出版のピアノ曲集「氷の城・イリュージョン」「めざめ・静かな風」「斑鳩」のはか、子供の為のピアノ小曲集として、「メルヘンの国」「小さな夢」「遊園地・宇苗船」(音楽之友社)「動物の大行進」(音楽の友社・CDフォンテック)「ピアノでひこうグリムのお話」「同・イソップのお話」「同・アンデルセンのお話」(東京音楽社)「マザーグース」(全音・CDフォンテック)などデリケー卜な感覚と想像力豊かな抒情的作品がある。
 日本作曲家協議会会員及び音楽文化協議会会員。

 作曲者はこの曲について次のようにのべている。『「Passion」(熱情)は、人間感情のうちでも、最も激しくアクティブ(能動的)な一面です。
 パレットの絵の貝の色には暖色系・寒色系という分け方がありますが、もしも音に、暖色・寒色といった色のイメージを重ねることができるとしたら、私にとって、「パッション」は、暖色系の朱赤の炎の色が感じられ、その炎の色は、この曲を適してずっと消えてしまうことなくイメージされました。』
5.藤田耕平・「白鳥」

 藤田は1945年横浜で生まれ、1970年東京芸術大学作曲科を卒業した。作曲は池内友次郎と諸井誠に学んだ。主要作品には、2台のピアノのための「八百屋お七の舞台への音楽」、七奏者のための「黙示」、管弦楽のための「星の刻」などがある。
 彼は音の積重ねや淡々と流れる旋律のひびきの中に微妙な音色の変化を追求し、個性的な作品を書いている。ソプラノとピアノのための「白鳥」は1979年のヴィオッティ国際音楽コンクール作曲部門で1、2位なしの3位に入賞している。「黙示」は1985年2月サンフランシスコでの現代音楽週間で演奏されると共に、NHK・FMより放送された。

 作曲者は今回の曲について、次のように述べている。『曲のタイトルは吉田一穂の同名の詩編によるものですが、それとともに 〈白鳥座〉 や 〈白鳥の歌〉もイメージしています。それらは、それぞれ私にとって印象深いものです。』
6.塚谷晃弘・「ギターとコントラバスのための音曲」

 塚谷は1919年東京に生まれ、1942年東京大学を卒業した。在学中から講井三郎について作曲を学ぶ。戦後1949年に「新作曲派協会」に参加、それ以来現在まで室内楽を中心に多くの作品を書いている。またその他の作品が1959年と61年に芸術祭奨勧賞(団体及個人)を受けている。主要作品には「弦楽と打楽器のための組曲」、「ヴァイオリン・ソロのためのファンタジア」、「コントラバスのための三章」(1981年8月)のほか能に基づく室内オペラなどがある。日本の伝統を生かした彼の現代的表現は海外からも注目され、2、3の作品がしばしば演奏されている。

 この曲について作曲者は次のように述べている。『ギターとコントラバスというおよそ性格の異る楽器をくみ合せて、1種の“語り”の音楽を展開しようと試みたものです。ギターが主に伴奏の役割りをっとめ、バスが語り、うなるというぐあいになれば満足だと思っております。』

田村 一郎