「フルサト」by ハイフェッツ
第54章 歌さがしの旅~浜離宮朝日ホールにて
(2007年9月11日)
待ちに待ったこの日。9月11日。私にとっては品川プリンスホテル(ステラボール)でのスペシャルライブ以来となります。何よりも会いたい、その一心で仕事を半ば放り投げて朝日新聞社に向かったのでした。
朝日ホールはクラシックのコンサートで何度も訪れたことがあります。室内楽向きの小さなホールです。最大500人ほどのキャパではないかと思います。幸運なことに前から3列目のほぼ真中。
コンサートの1曲目は、夏川さんのアカペラで始まる名曲「花」でした。私は止め処なく涙しました。懐かしい生歌と生のお声、そして菩薩さまのように優しいお顔とほっぺ。この日歌われた歌を全部聴いて思いました。
ああ、私は夏川さんの歌声に強く惹かれているんだなあと。
リクエストカバー曲も何曲か披露されましたが、やはり声ですよ。涙が止まらなくなるんです。私も年を取ったのかな、などと思ったりしましたが、いやいや。ホールの条件や座席のよさもあり、マイクを通さない生の声が直接私の体に響くのです。
夏川さんが歌探しの旅をステージで披露している間、私は私自身の「フルサト」への旅を想っていました。それぞれの歌にそれぞれの思い出があります。「フルサト」の中で取り上げた歌とエピソードの数々。胸の中で走馬灯のように思いが巡りめぐります。
彼女の旅は、決して戦略的に作り出されるものではないでしょう。レコード会社には計算や思惑があるにせよ、それとは別のところで、夏川さんは旅をしていました。
私はこの日の彼女を見て、「彼女は新たな船出を始めたんだ」と改めて思いました。例えて言うなら、キャプテン・ハーロック。
夢とロマンを羅針盤に・・・。
私もそうありたい、と感じた夜でした。