「フルサト」by ハイフェッツ
第50章 恐怖の百物語・其の参
(2007年8月25日)
前章の有森也実似の女性は、不思議なチケット共に夏川さんのコンサートを聴くことができて、成仏されたのでしょうか、その後は私の生活に特に何の変化もありませんでした。
さて、今回はごく最近、この春に体験した出来事です。ちょうど夏川さんが充電休養に入られてまもなくの4月中旬ごろでした。とても不思議な現象でしたが、後々考えますとぞっとするのです。
恐怖の百物語・其の参。シリーズ最終話です。では、皆様の納涼となりますかどうか・・・。
☆ ☆ ☆ ☆
私は本屋や楽譜屋、CD屋が大好きです。一日中そこにいてもいいといわれたら大喜びすると思います。お気に入りのお店は決めていて、仕事の帰りに必ずいく店があります。買うとは限りませんが、何か行くとほっとするんですね。その日も私はその大きなCD屋さんに入りました。いつもなら大好きなクラシックのコーナーに入り浸ります。が、この日は目的のヴァイオリニストのCDをあっさりと手にして、その後はJ‐POPSのコーナーを何気なく覘いていました。
歌謡曲という言葉がいつの頃からかJ‐POPSと呼ばれるようになりましたね。やや懐かしさもあり、岩崎宏美や渡辺真知子といったエクセレントなシンガーにつづいて、最近の若手歌手のCDを手に取り眺めていると、少し離れたコーナーでなにやらもめている声が。
もれ聞こえるところから推測するに、どうやら、初老男性の客が探しているCDを若い女性店員が見つけられずにいて、ねちねち文句を言われているようなのです。
その店員さんは、はっとさせるほどかわいい人でした。クレーマーの言葉があまりにも酷いものだったので私は間に入りました。「一体何の曲をお探しですか?」
聞いてみるとその男性のリクエストには無理があります。あるクラシックの曲を探しているのですが、曲名は誰でも知っている有名なものなのですけれど作曲者名を間違えて伝えているのです。店員さんは「作曲者は○○○の間違いではないですか」と訊ねたようなのですが、それが客には気に入らないらしく、もめているのです。
私は、其の男性がほしがっているCDをすぐに探し出し彼の目の前に差出し、
「はいどうぞ。でもいい年して・・・。ご自分が作曲者の名前間違えておいて、こんな若くてかわいい女性店員をいじめるなんて、情けないと思いませんか?」
といってやりました。そそくさと男性は支払いを済ませて出て行きました。
「酷い客でしたね」と振り返ると、その女性店員さんがいません。その代わり、中年の普通のおばさん店員が「ありがとうございました。たすかりました」と。
私は「先ほどの店員さんは?」と訊ねましたが、「え? 私だけですけれど・・・。」
私は首をかしげながら、CDを購入し家に帰ってこの出来事を妻に話しました。妻は笑って、「またスケベ心を抱くからです」と一喝されて終わりでした。
そうそう、買ってきたCDを聴こうと包みを開けると、目的のヴァイオリニストのCDではなく、何と「絢香」という歌手の「First Message」というアルバムでした。買った覚えはありませんし心当たりがありません。
というか、「絢香」というて名前はよく聞くのですけれど、私はこのときまで平原綾香のことかと思っていました。
・・・そして・・・その若い女性店員は綾香にそっくりでした!
夏川さんのいない間に綾香の生霊が私に襲い掛かってきたのでしょうか?ありえません。私の疲れすぎか、きつねに騙されたか、、、ちょっと怖くなりました。