第一段
文武天皇三年 役行者は(えんのぎょうじゃ)伊豆の大島に流罪になりました。
北方海上に紫雲が浮かぶのが見えたので訪ねると江の島の岩屋でした。
行者は岩屋にて祈り続けたところ七日目の未明に八臂弁才天が現れ世間に恵みをとのおつげ。
(海上を進む行者)
第二段
養老七年(七二三年)秦澄大師は江の島に住み毎日、龍口山に参詣しておりました。
龍口山では光明真言の呪文と南無阿弥陀仏の六文字を書いて、それぞれを二つの池に投げ入れて供養を続けておりました。
ある日龍口明神のお告げがありました。
「もし国に背く者があれば首を斬って我が前にかけよ」
秦澄は明神の教えを広く伝えましたので、それからは逆賊は斬首されて龍口山の前に掲げられました。
(船で渡る様子)
第三段
神亀五年から天平六年まで(七二八~三四)道智法師は江の島で法華経を読経していました。
毎日、天女が食事を持って読経を聞きにくるので不思議に思い藤の糸を天女の裾に付けてたどって行くと龍窟に至り糸は龍の尾に付いていました。
龍窟では龍の痛がり怒る声が聞こえ道智法師はあっという間に突然の暴風雨で龍口山に飛ばされてしまいました。
「今から我が島に藤は生えず、法師も住めず」 と怒る龍女の声が聞こえます。
第4段(詞のみ)