サルボウガイの血



上野のアメ横を歩いていると、魚屋さんの前にアカガイ一皿500円の札。一目でアカガイでない事はわかるのですが、アカガイがこんな値段で店頭に出るはずもないので、そのあたりは突っ込んでもしかたありません。

正体はもちろんサルボウガイです。潮干狩りをしていると、時々アサリに混じります。数が減ってサルボウガイだけ沢山獲れるという事は最近ではまずなくなりました。

今やアカガイの大物は「幻の貝」といっても良いほどの貴重な貝ですから、缶詰や剥き身は殆どがサルボウガイです。アカガイとサルボウガイについては、カワハギとウマヅラハギのようなもので剥き身にしてしまえば、わかる人は殆どいないので、名乗る事は殆ど問題ないとされているようです。


アカガイならこれだけあれば軽く一万円は超える所ですが、500円。


一目見るとアカガイと見分けが付きませんが、貝殻に付いている筋(スジ)の数がアカガイが40本から44本なのに対し、サルボウガイは30本から34本と少ないのです。
アカガイは筋が多いのでもっとにぎやかな感じになり、にぎやかだなと思ったらアカガイで、寂しいかなと思ったらサルボウガイです。
実際問題、潮干狩り場でアカガイが獲れる事はまずありませんので、この系統の貝が獲れたら90%以上の確率でサルボウガイです。

ハイガイという筋が17,8本のもっと寂しい貝もありますが、関東では見かけません。貝塚からは山のように出てくるので昔は関東にも沢山いたようです。


さて、このサルボウガイの筋の数を数えてみました。34本ありましたのでサルボウガイの中では多い方になります。逆に溝を数えると33本という事ですね。



何故、アカガイと呼ばれるのかというと、人間と同じように血液中にヘモグロビンを持っているため、血液が赤い色をしているという事です。サルボウガイも、もちろん同じです。


調理編

そこで、どうやって食べるかという話なのですが、アカガイと言えば刺身。
ただ、自分で獲った物ならともかく、アメ横の店頭に転がっていた?一山500円のサルボウガイを刺身にして良いものかどうか悩むところ。以前、ホヤを食べて大当たりに出会った経験から、佃煮にする事にしました。

まず、サルボウガイの表面を良く洗って酒蒸しにします。
ゲゲ、その段階で鍋の中が真っ黒になりました。ヘモグロビンの逆襲です。サルボウガイの体は全身ヘモグロビンで出来ていると思われるほどの黒さで、貝を茹でて汁が白くなるのには慣れているのですが、黒は結構ショックです。

口が開いたところで冷水で殻と身を離します。
その時に真黒い体を少し洗って、どす黒い位の状態にします。

そして身だけを、醤油、酒、ミリンで煮つめます。好みによって砂糖を加えます。
結局、また真っ黒になってしまったのですが、お味のほうは。

大きいサルボウガイでしたので、身も大きく大変食べがいがありました。味の方は、歯ごたえ十分で、とても美味しかったですヨ。


サルボウガイが山の様に獲れる事も無いと思いますが、もし沢山取れたときには、アサリとは別に調理する事を強くお勧めします。

アサリもハマグリも、全身真っ黒になってしまいますから、せっかくのオスマシも泥汁になってしまいます。

そうなんです。イカ墨の様な本物の黒なら、それはそれでアリかなと思うのですが、泥の色なんです。

子供の時にオママゴトで泥汁とか作りませんでしたか?
あのイメージなんです。

ドロドロとした泥んこの、ドラヤキがドロヤキになったような?

しつこいよ。

佃煮まで行き着くと最高なんですが、途中が。

もう一度言いますが、味は最高でした。