プ ロ グ ラ ム |
1.ユリウシュ ウチュク・「3MINIATURY」 |
ヴァイオリン・恵藤久美子 ピアノ・中野 洋子 |
2.イィジー コレルト・「MARIMBAFONIA」 |
マリンバ・大熊理津子 |
3.寺内 園生・「 ともしび」 「甘い風」 |
ギター 稲垣 稔 |
4.伊藤 隆太・「Duetto for Shakuhachi and 17Gen No.14,2002」 |
尺八・三橋 貴風 十七絃・菊地 悌子 |
5.藤田 耕平・「木の曲」 |
ピアノ・中野 洋子 |
6.山岸 磨夫・ 「オーボエのために―二つの情景<樹々のなかで、海辺にて>―」 |
オーボエ・原田 知篤 |
7.安生 慶・「風の軌跡―Ⅳ―」 ―2つのViolin,Viola,Celloのために― |
ヴァイオリンⅠ・上野 美科 ヴァイオリンⅠⅠ・新井 瑞穂 ヴィオラ・井上 典子 チェロ・遠藤 真理 |
曲目解説 田村 進
1.ユリウシュ ウチュク・3つのミニアチュア
ウチュクは1927年生まれのポーランドの作曲家で、クラクフ音楽院でヴィエホヴィチに学んだ。
その後、パリでブーランジェにも学び、バレエ、交響曲、室内楽など各分野の作品を書き、スイスなど内外で多くの賞を得た。特にオラトリオ「アッシジの聖フランチェスコ」(1976)は注目された。又、バレエ「ニオベ」(1972)、オペラ「デミウルゴス」(1990)など多くの舞台用の作品でも注目されている。更に多くの合唱曲や声楽曲は現代的で生き生きとしたポーランド的な叙情性や明るさに溢れ、このような声楽曲の特色は多くの器楽曲にも見られる。この曲は1984年の作。曲の冒頭に「私の娘-アグニェーシカヘ」と書かれている。曲は3つの部分からなり、それぞれ異なった音の響きの美しさや、リズムの躍動性を求めている。演奏時間は約5分15秒と指定され、短い曲ではあるが、味のある作品である。
1. | ソノレ 4分の4拍子。ヴァイオリンが7連符と3連符からなる旋律を流麗に響かせている。 |
2. | ドルチェ・カンタービレ 4分の2拍子。やわらかく歌うような曲。子守唄であろう。ヴァイオリンの旋律をピアノが繰り返すカノン風の手法を使っている。 |
3. | 4分の4拍子。ヴァイオリンが3連符と4連符の上向音型と下向音型を、メッゾ・スタッカートで演奏する。 |
2.イィジー コレルト・マリンバフオニア
イイジー コレルトは1943年プラハで生まれ、ブルノ音楽院でコントラバスを学び1968年卒業。
その後ヤナーチェック音楽アカデミーで作曲をアロイス・ピノスなどに学び、1991年からプラハ音楽アカデミーで作曲理論を教えている。彼の作品は交響曲や室内楽などすべて器楽で占められている。「私はリズムの可能性の発展に興味があり、アフリカの民間伝承の打楽器奏者達の音楽、ガムラン、ジャズ音楽の中から着想を得て、それらのインスピレーションを現代音楽の全ての可能な手法で混合する。この私の作風を“ポリスティル”と呼ぶことができる。」と書いており、昨年の31回ではコントラバスとピアノのための「オール・ブルース」を初演したが、今回はマリンバのための音楽を発表する。
3.寺内園生・「 ともしび」「甘い風」
ピアノを中野洋子と伊達純に、作曲と和声を寺内昭、
川井学に学ぶ。
寺内は1959年千葉に生まれ、高校卒業後渡独し、マリアフンク女史に作曲法を学んだ。代表作には、既出版のピアノ曲集「氷の城・イリュージョン」「めざめ・静かな風」「斑鳩」のはか、子供の為のピアノ小曲集として、「メルヘンの国」「小さな夢」「遊園地・宇宙船」(音楽之友社)「動物の大行進」(音楽の友社・CDフォンテック)「ピアノでひこうグリムのお話」(東京音楽社)「マザーグース」(全音・CDフォンテック)などデリケートな感覚と想像力豊かな抒情的作品がある。
ヴァイオリン・ソロ曲「アクティヴ」は、1999年2月にNHK・FMより放送された。
日本作曲家協議会会員及び音楽文化協議会会員。
作曲者はこの曲について次のようにのべている。『「LaLumiとreともしび」「甘い風」の2曲は、2001年5月にギタリスト稲垣稔氏の委嘱により作曲いたしました。同氏により、2001年6月22日GGサロン・コンサートにて初演され、この度一部改訂初演として稲垣氏に演奏していただくことになりました。「LaLumiとreともしび」では、生命の灯をそっと両手の中につつみ込むようなイメージを、「甘い風」は、海辺にそよぐ風とたわむれるようなイメージを持って作曲いたしました。』
4.伊藤隆太・「Duetto for Shakuhachi and 17Gen No.14,2002」
伊藤は1922年、広島県呉市に生まれた。東京大学医学部を卒業し、かたわら作曲を池内友次郎、諸井三郎、高田三郎に学んだ。第19回目本音楽コンクール管弦楽作曲部門で第1位ののち、琴曲の分析から邦楽器の作品も書き、芸術祭、米国現音コンクールなど計12の賞を受けた。プレゼンテーションにも第18回以後、意欲的な作品を発表している。
今回で「尺八と17絃の二重奏曲」は14曲目となるが、これまで各曲ともそれぞれユニークな特徴をもつ音楽を発表してきた。作曲者は今回の作品について特筆すべきことはのべていないが、どんな作品になるか楽しみである。
5.藤田耕平・「木の曲」
藤田は1945年横浜で生まれ、1970年東京芸術大学作曲科を卒業した。作曲は池内友次郎と諸井誠に学んだ。
彼は音の積重ねや淡々と流れる旋律のひびきの中に微妙な音色の変化を追求し、個性的な作品を書いている。ソプラノとピアノのための「白鳥」は1979年のヴィオッティ国際音楽コンクール作曲部門で1、2位なしの3位に入賞している。「黙示」は1985年2月サンフランシスコでの現代音楽週間で演奏されると共に、NHK・FMより放送された。また、オーボエ・オンドマルトノ・弦楽合奏のための「時は、雨のように……」が、1996年春に、ピアノのための「Far away」が2000年春に、それぞれNHK・FMより放送された。
彼はこの曲について次のようにのべている。
『標題は、ピアノの鍵盤を表わしていますが、曲中では、
木にイメージされるさまざまな様相を表現しています。』
6.山岸磨夫・「オーボエのために―二つの情景<樹々のなかで、海辺にて>―」
山岸は1933年東京で生まれ、1957年東京芸術大学作曲科を卒業した。作曲は下総皖一に学んだ。1961年の「シンフォニア」と1962年の「カプリチオとパッサカリア」は毎日コンクールの管弦楽部門で入賞している。主要作品には交声曲「夕鴨」、「ヴァイオリンとピアノのための2つの詠」、「フルートとギターのための気と律」(昭和50年度武井賞受賞)、「弦楽四重奏Ⅰ」「Ⅱ」、「ヴィオラとピアノのための変容Ⅰ」、「変容Ⅱ」のほか、合唱曲「白鳥帰行」、オペラ「温羅の砦」、「交響曲Ⅰ」、「管弦楽のための変容」、「二台のピアノとオーケストラのための協奏曲」「管弦楽のための前奏曲」などを書き上げ演奏されている。彼は日本の題材にイメージを求め、平易で伝統的な手法を用いながら現代的でユニークな味をもつ作品を書いているが「フルートとギターのための気と律」はハンガリーにおいて演奏されるなど盛んな創作活動を行っている。現在、くらしき作陽大学音楽学部教授。
彼はこの曲について、次のようにのべている。『この作品についての言葉はとくにありませんが、自画像の一つとして考えました。』
7.安生 慶・「風の軌跡-Ⅳ-」-2つのViolin,Viola,Celloのために-
安生は1935年東京に生まれ、成城学園より桐朋学園音楽科に進み、管楽器を専攻。卒業後、作曲を棚瀬正氏に師事。日本現代音楽協会会員。
主要作品には「風影―二胡とオーケストラのために、ViolinとPianoのための挽歌」、「彩画-ViolaとPianoのための幻想曲」、「弦楽四重奏曲」、「8 Violaのための詩曲」、「彼方からの風景-Harpのために」、「CelloとPianoとのために(#2)」・「ピアノのための譚詩曲」、M.Sop.Pfのための「枯野」このほか歌曲「黄泉のくに歌」(詩・花輪莞爾)、および「酒呑童子」(詩・花輪莞爾)、などがある。
彼はこの曲について次のようにのべている。 『「風の軌跡」として4曲目になる。
プレゼンテーションでは、#2(Vn・Vc)#3(Vn・Vla・Vc)につづいて、今回はもう一つVnを加えたので、弦楽四重奏の形となった。
四つの異なった空間と、四筋の風を発想のもとにして、夫々の空間が交差したり、重ね合わされたり、ぶつかったり、時には混沌とした状態を作り出す。
終りは各々が遠く離れて消え去ってゆくが、何かのきっかけか、偶然かで、また出会うことがあるかも知れない……という想いを残して……。』
田村 一郎