8 とっておきのしじみ料理



 数あるしじみ料理の中で、しじみ汁やしじみの味噌汁が最もポピュラーで親しまれているのはいうまでもありません。ここではちょっとかわった汁物を紹介します。作るのは大変ですが試して下さい。

(1)しじみのしんじょ椀(夫婦しんじょ椀)
(2)しじみの冷製クリームスープ

しじみのしんじょ椀

*材料
(4人分)
白身魚のすりみ・・・・・・・・・250g
酒・・・・・・・・・・・・・・・・・・小さじ2
卵白・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ2
くず・・・・・・・・・・・・・・・・・小さじ2
昆布だし・・・・・・・・・・・・・・・適宜
おろし大和芋・・・・・・・・・・大さじ2
塩(すり身の塩分によって加減する)
しじみのむきみ・・・・・・・・・40粒位
(蒸し煮して取り出した身
生しいたけ・・・・・・・・・・・4枚
みつば・・・・・・・・・・・・・12本
ゆず・・・・・・・・・・・・・・・少量
だし・・・・・・・・・・・・・3hカップ
塩・・・・・・・・・・・・・・小さじ%
うすくちしょうゆ・・・・・子さじ1
(塩、しょうゆ合わせてだしの0.6%塩分)

*作り方
1) すりみをすり鉢に入れ、酒、卵白、くずを昆布だしで溶いたものを加えて、よくすり混ぜる。木じゃくしでしんじょ地をすくって、やっと落ちるくらいまで昆布だしを加えてのばし、おろした大和芋を加えて混ぜる。塩で味を調える。
2) 1)にしじみのむきみを加えて混ぜ、手のひらを水で湿らせてしんじょ地を形づくり、上にもしじみをのせる。このしんじょを茹でる。
3) 椀に2)のしんじょの水気をきって盛り、ゆでて結んだみつぱを添える。
4) だし汁を温め塩とうすくちしょうゆで昧つけし、石づきをとった生しいたけを入れて煮立たせ、弱火にして1分ほど煮る。
5) 3)の椀に、しいたけを盛り、熱い汁を張る。ゆずの皮をそぎ、吸い口にする。




夫婦しんじょ椀
 夏季ヤマトシジミの雌雄の区別が判るようになったら、生のしじみの殻をはずし、雌雄に分けて包丁できざみ、しんじょ地(しじみのしんじょ椀の作り方1)に別々に入れしょうがの絞り汁少量を加えて混ぜて形づくる。これにそれぞれのしじみのむきみをのせて茹で、夫婦しんじょを作り、椀にひとつすつ入れ、上記しんじょ椀と同様に仕上げる。

しじみの冷製クリームスープ
*材料(4人分)
 じゃがいも・・・・・・・・・・・・・・・100g
 たまねぎ・・・・・・・・・・・・・・・・150g
 にんじん・・・・・・・・・・・・・・・・・50g
 セロリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
 にんにく・・・・・・・・・・・・・・・・・1かけ
 バター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20g
 小麦粉・・・・・・・・・・・・・・・・・・大さじ1
 しじみの煮だし汁・・・・・・・・・・・1.5カップ
      (しじみ300~400g、
       水2カップで作る)
 牛乳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1カップ
 生クリーム・・・・・・・・・・・・・・・・1/2カップ
 a. 塩、胡椒、白ワイン
 b. しじみのむきみ、あさつさ(小口切り)


*作り方
1) 鍋にバターを溶かし、にんにくを炒め、香りが出たらたまねぎ、にんじん、セロリの薄切りを入れほんの少し色ずくまでゆっくり炒める。さらにしゃがいもも加える。じゃがいもがしんなりしてきたら、小麦粉を振りいれて1~2分炒める。しじみの煮だし汁を加えて、木じゃくしで底をこすり落とす。煮たってきたら、aで調味し、弱火で15~20分煮る。
2) 1)をミキサーにかけ、鍋に戻して、やや濃い目に塩味を調える。これをポールに移して冷蔵庫でよく冷やす。
3) 2)に牛乳を混ぜ、生クリームを混ぜる。よく冷やして、スープ皿に盛り、bを上に振る。



 終わりに、本草の執事にあたり有益なご助言をいただきましたしじみ研究会の会員で共同研究者の島根県水産試験場三刀屋内水面分場分場長中村幹雄氏と夫人の中村淳子氏、学習院女子短期大学の非常勤講師高橋文子先生に感謝申し上げます。また、しじみの耐性実験やうま味成分の分析にあたっては、島根県水産試験場三刀屋内水面分場と学習院女子短期大学家庭生活科食物研究室の関係者各位から多大なご協力をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。

《引用文献》
(1) 推野季雄『水産無脊椎動物学』培風館、1969年、178~201頁
(2) 谷田専治『新版水産動物学』恒星社厚生閣、1984年、99~183頁
(3) 中村幹雄『汽水湖の生物と漁業』アーパンクポタ、(32)、1993年、14~23頁
(4) 小俣靖 『美味しさと味覚の科学』日本工業新聞社、1986年、34~66頁
(5) 鴻巣章二・渡辺勝子『うま味』女子栄養大学出版部、1987年、140~171頁
(6) Fuke,S.,and S.Konosu(1991):Taste-Active Components in Some Foods:A Review of Japanese Research.Physiology & Behavior,49,863-868.
(7) 中村幹雄・安木茂・高橋文子・品川明・中尾繋「ヤマトシジミの塩分耐性」44(1)1996年、3~35頁
(8) 中村幹雄・品川明・戸田顕史・中尾繋「ヤマトシジミの貧酸素耐性」45、1997年、9~15頁


品川明(しながわあきら)
学習院女子短期大学助教授。水産生物化学・環境化学専攻。現在は、汽水域に生息する生物の環境適応を中心に研究。主要著書『魚介類のエキス成分』共著、恒星社厚生閣)

学習院教育新書11
生活紀行
平成9年3月21日 第1刷発行
編著者  家庭生活科
発行   学習院総務部広報課