3 しじみの栄養



ここではヤマトシジミの栄養についていろいろな他の食品と比べて栄養を評価してみましょう。

やまとしじみの栄養分
しじみ中のタンパク質の栄養価について考えてみることにします。タンパク質は20種のアミノ酸で横成されています。このアミノ酸には体内でつくることができるものとできないものがあります。できないもの(必須アミノ酸)はどうして食物からとらなけれはいけないわけです。必須アミノ酸はイソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、パリン、ヒスチジンの9種類です。この他にシスチンとチロシソは必須アミノ酸ではありませんが、それぞれメチオニン(含硫アミノ酸)とフェニルアラニン(芳香族アミノ酸)として扱われます。

 さて、しじみのタンパク質の栄養価は他の動植物のそれとは違いがあるのでしょうか。タンパク質の栄養価を評価する基準についてはなしましょう。タンバタ質のアミノ酸組成から求める栄養価の評価法を化学的評価法と呼びます。実際には食品中の必須アミノ酸量を測定し、表2の1985年にFAO/WHO/UNUが提出した基準となる必須アミノ酸(mg\g窒素)の配合割合と比較することによりえられた値をアミノ酸スコアーといいます。



















アミノ酸スコアー 100 61 100 100 100 100 100 100 84 89
タンパク質(%) - 6.8 35.3 12.3 2.9 18.4 18.7 6.8 8.3 10.4
イソロイシン 180 250 290 340 330 300 290 270 230 230
ロイシン 410 500 470 550 600 540 500 420 390 380
リシン 360 220 390 450 500 590 580 450 400 400
含流アミノ酸 160 290 190 370 280 260 260 250 220 230
芳香族アミノ酸 390 580 540 580 550 470 480 460 400 370
トレオニン 210 210 230 290 270 300 290 340 260 220
トリプトファン 70 87 79 94 97 71 70 83 59 62
パリン 220 380 300 420 390 310 320 330 250 250
ヒスチジン 120 160 170 160 190 260 260 140 120 130
合計 2120 2677 2659 3254 3207 3101 3050 2743 2329 2272
(四訂食品成分表より引用)  :第一制限アミノ酸  :第二制限アミノ酸
     表2 主な食品のアミノ酸スコアーとアミノ酸含量(mg/gN)




 しじみのアミノ較スコアーと他の食品のそれを比較すると、しじみは他の栄養価の高い食品(例えば鶏卵など)と同しアミノ酸スコアー100の食品です。二枚貝どうしの比較でもアミノ酸スコアーはアサリやハマグリより高いことがわかります。さらに、しじみはカルシウムなどのミネラルが多く、亜鉛、鉄などの必須微量元素やビタミンB1とビタミンB12についても満い値を示しています (表3)表4にしじみに多いミネラルとビタミンの生理作用と欠乏症を戟せました。

アミノ酸スコアー カルシウム 亜鉛 ビタミンB2 ビタミンB12
ヤマトシジミ 100 340 2.1 10 0.65 62.4
アサリ 84 80 1.3 7 0.15 59.2
ハマグリ 89 140 1.4 5 0.30 28.4
(四訂食品成分表より引用)  成分単位はビタミンB12はμg/100g、それ以外はmg/100g
     表3ヤマトシジミの栄養評価(アサリ、ハマグリとの比較)

生理作用 欠乏症
カルシウム 骨・歯の硬硬組織形成、
細胞の情報伝達
血液凝固作用に関与、
心筋収縮作用の増進、
筋肉興奮性抑制、
神経の感受性を静める
トリプシンなどの
酸素作用の活性化
十分に成長しない。
骨や歯が弱くなる。
神経過敏になる。
(ビタミンDが不足すると
カルシウムの収縮が悪くなり、
欠乏症をおこしやすい。
亜鉛 炭酸脱水素酵素・
乳酸脱水素酵素などの成分、
核酸、タンパク質の
合成に関与。
十分に成長しない。
皮膚障害や味覚障害が起こる。
ヘモグロビン・ミオグロビンの
構成成分。
各種酵素を活性化。
貧血になる。
疲れやすく忘れっぽくなる。
乳児では発育が遅れる。
ビタミンB
リボフラビン
発育ビタミンといわれる。
補酵素として、アミノ酸、
脂質、炭水化物の代謝に
不可欠。
動物の成長を促進する。
成長停止、口唇炎、
口角炎、角膜炎、
シビ・ガッチャキ症
ビタミンB12 赤いビタミンといわれる。
コバルトを含む。
アミノ酸代謝に関与
たんぱく質や核酸の
生合成に不可欠。
悪性貧血、神経疾患、
DNA合成異常
     表4 ミネラルおよびビタミンの生理作用および欠乏症

 なお、成分表のデータはどこのしじみを試料としたかは記載されていません。しかし、著者らが測定したしじみは宍道湖産のヤマトシジミです。例えば、表2のタンバタ質量は成分表では6.8%と低い値でした。宍道湖産のヤマトシジミは通年で10%前後のタンパク質が含まれ、成分表より栄養成分含量が多いことがわかりました。


しじみは肝臓に効く
 しじみはどうして肝臓によいのでしょうか? しじみが肝臓によいという明確な根拠はないと思います。しかし、肝臓病かどうかの判断として肝臓に含まれる酵素を測定します。この辞索がグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GOT)とグルタミン酸ピルピン敢トランスアミナーゼ (GPT) です。GOTとGPTは肝炎などで肝細胞が損傷すると血液中に漏れだします。そこで肝細胞を修復しなければなりません。肝細胞をはじめ細胞の土成介はタンパク質です。タンパク質を合成するには必須アミノ酸のバランスのとれた食品を食べなければなりません。また、アミノ酸以外にもタンパク質の合成に関与するものとして、ミネラル成分の亜鉛やビタミンB2、ビタミンB12が不可欠です。これらタンパク質を合戒するのに必要な成分がしじみ中に多量に含まれています。このことがししみが肝臓に効くとされる理由かもしれません。もう一つは、しじみに多量に含まれる成分のうち (表3)、カルシウムを除いた成分はヒトや牛などの動物組織では特に肝臓中に多く含まれる成分です。本来肝臓に多い鉄やビタミンB群がしじみ中にも多量に認められることが、ししみは肝臓に効くと判断された一因ではないでしょうか?