左右については、貝が後から前の方に向いたと考えて下さい。そのとき右側の貝殻が右殻で反対が左殻になるわけです。また、殻長は前から後まで、殻高とは殻頂から腹側まで、殻幅は左右両側の殻の膨らみから膨らみまでをいいます。軟体部は背側の内臓塊とそこから腹側にのびている筋肉質の足部があり、その形が斧に似ていることから斧足類という呼び名があります。また、足部の各側には二枚の鰓(えら)があり、その外側を外套幕が包んでおり、体内の筋肉部には貝殻を閉鎖するための閉殻筋が前後にあります。
殻は厚い石灰質でできていて、形もハマグリ型が普通です。しかし、中にはマテガイのように長方形のものやカガミガイのように円形のもの、タイラギのように二等辺三角形のもの、マガキのように一定の形がないものまでさまざまあります。
しじみという貝
それら二枚貝の中で、日本人に特に親しまれている一つにしじみがあります。しかし、しじみという貝は本当はいないのです。生物の学問的な名称のことを日本語でいうと標準和名でヤマトシジミ、セタシジミ、マシジミの3種を通称しじみと表しています。
もう少し専門的に分類しますと、ヤマトシジミなどのしじみは異歯亜網、シジミ科(Corbiculidae)に属する二枚貝で、①ヤエヤマヒルギンシジミ Geloina erosa は沖縄県八重山諸島などのマングローブ林に生息するシジミ科中最も大きい種で内面は白色をしています。②ヤマトシジミ Corbicula japanica は汽水に棲み、雌雄異体で卵生です。中国産の C.fluminalis に似ているといわれています。③セタシジミ C.sandai はヤマトシジミに似ていますが、淡水の琵琶湖水系の特産種です。④マシジミ C.leana は淡水産で雌雄同体で卵胎生です。シジミ類は日本をはじめ、台湾などでも食用とされていますが、欧米では一般に食用にしません。それどころかかなりひどい名で呼ばれています。例えば、an inasive pest bivalve (発電所に侵入する厄介な貝)、mud clam (取るに足らない貝)、asintic clam (軽蔑的表現でアジアの貝) など、まったくひどい言いようです。現にアメリカでは発電所の温排水の出口にしじみが多量に発生し、除去に莫大なお金と労力がかかり、そのために邪魔者扱いされているそうです。
その他の二枚貝
まあ、アメリカの事情はさておいて日本ではしじみ以外にも多くの種類の二枚貝を食べます。水産物流統計年報によりますと、巻貝を含む貝類のわが国の年間生産量は1994年(平成6年)約85万トンで、水産物流総生産の10.5%を占めています。その内訳は海面漁業対象種(海で漁獲される水産物)82.5万トンに対して、内水面漁業対象種(河川や湖沼で漁獲される水産物)はわずか約2.5万トンです。内水面で漁獲される貝のほとんどがしじみで占められ、実に2.4万トンに達しています。貝類全体では巻貝より二枚貝が圧倒的に多く、中でもホタテガイやカキ類で貝類総生産量の80%を超え、それについであさり類、シジミ類、フネガイ類が多く捕獲されています。
なお、汽水に生息するシジミ類以外はほとんどの貝類が海面漁業対象種であります。表1に食用として重要な二枚貝を載せました。みなさんは何種類の二枚貝を食べたことがありますか?数えてみましょう!
分 類 群 | 標 準 和 名 |
フネガイ類 | アカガイ、サルボウガイ、サトウガイ、ハイガイ |
イガイ類 | イガイ、ムラサキイガイ、エゾヒバリガイ |
イタヤガイ類 | ホタテガイ、イタヤガイ、アカザラガイ、ヒオウギ |
イタボヤキ類 | マガキ、スミノエガキ、イワガキ、イタボガキ |
バカガイ類 | ウバガイ、バカガイ、ミルクイガイ、シオフキガイ |
ハマグリ類 | ハマグリ、チョウセンハマグリ、ウチムラサキガイ |
アサリ類 | アサリ、ヒメアサリ、オキアサリ |
その他の二枚貝 | タイラギ、トリガイ、ナミガイ、アゲマキガイなど |