しじみのはなし
品川明
はじめに
日本人は縄文時代からしじみを食べていたようです。宍道湖周辺の西川津遺跡からは、この時代の貝殻が出土しています。弥生時代の遺跡からはさらに多量の貝殻がでてきていますが、現代のものに比べ極めて大きいのが特徴です。江戸時代には、松江藩の殺生方から免許をもらった漁民がしじみを漁獲し、大釜でゆで、ゆで汁は肥料として農民に、貝殻はしっくいの原料として灰屋に、身の部分は伝統料理の一つとされる佃煮などの食料として一般に売られて、あますことなく全部利用されていたようです。
このように、しじみは日本人の食文化に古くから関わり、現在も私たちの食生活になくてはならない食料です。しかし、今日しじみについて尋ねてみると、「しじみは食べてもそれ以上は興味がないし、食べると肝臓にいいぐらいしか知らない」という人がほとんどです。この章を読んで、しじみのすばらしさやしじみが私たちにもたらす恵みを少しでも感じていただければ幸いです。そして、おいしいしじみを永遠に子孫に残すにはどのようなことをしなければいけないか深く考えてみて下さい。
この「しじみのはなし」は平成9年3月21日学習院総務部広報課発行の学習院教育新書「生活紀行」の中に学習院女子大学の品川明先生が執筆されたものを品川先生のご協力で史上最強の潮干狩り超人のページ上に全文ノーカットで掲載しています。