1) リードの出来るまで カマボコ型ケーン完成
アシはイネ科の植物で秋になると写真の様な穂が実ります。
写真は日本の川原に生えているアシ。
アシ畑
オーボエのリードに使うアシ(ヨシ)は外径が9.0mm~11.5mm位のものを使用します。径が小さいものほどリードにした時の開きが大きくなります。
11.5mm~13.5mmのものはコーラングレ、13.5mm~18mmのものはバロックオーボエなど、22mm~27mmのものはバスーンに使用されます。
もっと太いものはクラリネットやサックスのリードになります。
アシは自生のものでは無く、リードに適したものが、すべて人為的に栽培されています。
アシの穂が実り綿の代用にもされたという白い羽根付きの種子が風に飛ばされるとアシは冬を迎えて枯れ始めます。
群生しているアシ。
アシの伐採
伐採は樹液が少なくなる冬期に行われ、屋内乾燥の後、屋外乾燥を何度か繰り返します。
乾燥には7年をかけるのが最上とされていましたが、現在では2年程で出荷しているようです。
南フランスはアフリカ大陸からのミストラルと呼ばれる非常に乾燥した風が吹きつけアシの乾燥にはとても適しています。土壌も石灰質のため酸化しにくいので7年となったのかも知れません。
我が国の気候では、何年も置いておくと酸化してパサパサになってしまうようです。
オーボエ用のアシの産地は南フランスを中心にスペインとイタリアのフランス国境に近い地中海沿岸です。アシ自体はエジプトなどのアフリカ側にも生えていますのでアフリカ産の超乾燥極上アシが登場する日が来るかもしれません。
カノンと呼ばれる丸材。アシの節を切り捨ててストロー状にしたもの。
我が国にはこの状態で輸入されます。
丸材
冬に刈り取ったアシは枝や葉を切り落とした状態で並べて乾燥します。乾燥が終わると電動のこぎりで節の部分を切り捨ててパイプ状にして出荷されます。アシは竹に似ていますが竹ほどテーパが無く寸胴ですので径の管理はわりと簡単です。形も真円で竹のような凹みはありません。節の近くだけに写真のようなくぼみが出来ます。
肉厚の丸材は材質が硬く、肉薄の丸材は柔らかい傾向があります。
この丸材は10mmでオーボエのものとしては普通のものです。ガウジングマシンの特性やシェーパーやチューブの形も影響するので、人によって選ぶサイズが違います。ここで選択を間違えると、全く開きの無いリードやストローのように開きすぎのリードが出来たりします。
ちょうど薪割りの様に割っていきます。
スプリット
直径が10.5mm以下の場合はスプリッターと呼ばれる3ツ割り器具を使って3等分します。
ナイフを使って3等分する場合は先ず、1対2の要領で2つに割り、大きい方を2等分して3枚にします。4等分の場合は2等分を2回繰り返します。
割った状態のアシ
カッターに乗せた状態です
カッティング
割られたアシはガウジングマシンにかけるためにカッターで長さを揃えます。
アシは反っていたり表面にキズがある場合もあるので、良い場所を選んでカットします。
アシを乗せるベッドの長さはマシンによって微妙に違うので通常ガウジングマシンには専用のカッターが付属しています。
こんな具合に長さが揃いました。
この状態からガウジングマシンにかけるのですが、その前にプレガウジング(荒削り)という、前作業を行う事もあります。
丸材を3つにカットする
上の丸いタマを持って往復させます
ガウジング
ガウジングマシンはアシの内側を丸い刃のカンナで削って厚さを均一にする器械です。
厚さはネジを調整する事で簡単に設定できます。
刃の部分を拡大したところ。
ベッドの両端には下から飛び出たストッパーが付いていて、ケーンがベッドから飛び出さないようになっています。ケーンの反りで外れたりしないように上から押さえる金具も付いています。
1/100mmまで計測できるダイヤルゲージ
厚さの計測
ダイヤルゲージで削り終わったケーンの厚さを計測します。
通常0.53mm~0.63mm程度の範囲のものが使われます。
カマボコ型ケーンの端面
カマボコ型ケーン
ガウジングマシンにかけると中心部が厚く、サイドが薄くなります。その差はマシンメーカーによっても違いますが、刃の研ぎ方でも変わります。サイドの落ち方で音色や完成時の開き方に大きな違いが出ます。
この状態が店頭でカマボコ型と呼ばれているものです。
ガウジングマシンでカマボコ型に削る